孫正義氏「Sprintのネットワークは全米1位になる」--再建に自信

 「間違いなくSprintのネットワークは全米1位になる。ダントツの1位になるということが私の中で見えてきて手応えを感じ始めている」――ソフトバンクグループ代表取締役社長の孫正義氏は2月10日、子会社の米Sprintについてこのように語り、同社の再建の見通しが立っていることをアピールした。

 Sprintの反転に向けた戦略として、以前から孫氏が掲げていたのが「OPEX(固定費)削減」「資金調達の多様化」「ネットワーク改善」の3つだ。同日はそこに「純増の改善(ポストペイド)」を加えた4つの項目について、それぞれの進捗が語られた。

反転に向けた4つの戦略
反転に向けた4つの戦略

 まず、純増数は50.1万で、MNPは4四半期連続の純増となった。また、同社が重要な指標としているポストペイド携帯電話の純増数は36.6万で、過去3年間で最高となった。解約率も、10~12月期では最小となる1.62%だったという。契約時の審査基準を上げたことで、信用力の低いサブプライム層を除いた優良顧客の新規獲得が引き続き増えているという。

 OPEXについては2015年4~12月の9カ月間で、前年同期と比べて8億ドルの削減に成功したと説明。孫氏は前回の決算会見で、470ほどの固定費削減に向けたプログラムを並行して実施していると話していたが、これを750まで増やしていることを明らかにした。今後も商品原価や販管費などを削減することで、年間で20億ドルのコスト削減を目指すとしている。続けて資金調達については、ベンダーファイナンスや端末リース調達など、多様な手段で支払い財源を確保していると説明する。

 最後にネットワークの改善について。孫氏は「この2年間、一生懸命に設備投資をしてきた。おかげさまでやっとネットワークを改善できた」と話し、LTEのダウンロード実効速度において、米国の4大携帯キャリアの中で、最速のネットワークスピードを達成したとするニールセンの調査結果を紹介。また、同社の内部調査の結果、全国ベースの接続率でも2位となり、ニューヨークやシカゴでは1位になったと強調した。

  • 調整後のEBITDAは前期比41%増

  • ポストペイド携帯電話の純増数は過去3年で最高

  • 固定費は年間で20億ドル削減へ

  • 資金調達先を多様化

  • ダウンロード実効速度で1位になったと強調

  • アワードも多数受賞しているという

 「私自身がチーフネットワークオフィサーとなって、(Sprintの)ネットワーク設計と運用の総責任者をしている。毎日夜10~2時までソフトバンクとSprintの技術者が、休みでもほぼ毎日設計に携わっている。これが楽しくて仕方ない、もう趣味の世界」(孫氏)。

 「ネットワーク設計が楽しくて仕方ない」と孫氏 「ネットワーク設計が楽しくて仕方ない」と孫氏
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 これらの施策の結果、Sprintの売上減が底打ちしたと孫氏。固定費削減などにより、調整後のEBITDAも、前期比41%増の60億ドルになったと説明した。また、営業利益も0.8億ドルの赤字から、3億ドルの黒字に転じるなど、大きく改善しているとした。同社では当初66~71億ドルだった調整後EBITDAの2015年度予想を、77~80億ドルに上方修正している。

 「(T-Mobileの買収と合併を断念し)去年の今ごろはSprintを売っぱらいたいと思ったが、買ってくれる人が誰もいなかった。だったら自分で改善するしかないということで、背水の陣で直接取り組むということをやり始めて、逃げも隠れもしないという覚悟の中で解決改善の糸口が見えてきた」と孫氏。同社の先行きを不安視する世間と、自身の気持ちのギャップが大きい時ほどチャンスだと語った。

第3四半期の業績は、米Yahooの買収にも言及

 ソフトバンクグループの2016年3月期第3四半期(2015年4~12月)の連結業績は、売上高が前年同期比7.9%増の6兆8102億600万円、営業利益が同18.0%増の8753億2200万円、純利益が同26.0%減の4289億7200万円となった。前年同期は上場したグループ会社のAlibabaの一時益を含んでいたことから純利益はマイナスとなった。

 国内の通信事業については、1.41%という解約率の高さが課題だと孫氏。ただし、複数のサービスを利用するユーザーは、解約率が約半分まで減ることから、今後は「ソフトバンク光」や「ソフトバンクでんき」など、家庭に関するさまざまなサービスをまとめて契約することで、料金が割り引かれる「おうち割」を積極的に展開したいという。なお、ソフトバンク光の契約数は120万を超えたそうだ。

  • グループのEBITDA。「Sprintは稼ぎ頭になる」と孫氏

  • 解約率の高さが課題。今後は複数のサービスによるセット割を展開

  • 「ソフトバンク光」は120万契約を超えた

 そのほか、子会社であるヤフーがディスプレイ広告の好調によって増収増益を維持しているほか、海外の投資先である中国のAlibabaや、インドのSnapdeal、インドネシアのTokopediaなどが、いずれも大きく成長していると語った。

 また、米通信大手のVerizon Communicationsが、米Yahooの買収に興味を示していると報じられた。この点については「Yahoo! JAPANはブランドはたまたま共有しているが、ほとんどは日本の独自サービス。ソフトバンクが(出資比率で)60%持っているので、米国はあくまでもサブパートナーであり、(米Yahooの)株主がどこになっても直接的にネガティブな影響はない」(孫氏)との認識を示した。

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