国内の大学が研究開発した触覚デバイスや企業が提供するプロダクト、サービスを組み合わせて、「新しい触覚体験」を作り出すハッカソンイベント「ショッカソン(Shock-a-thon)」。2015年は、スパイスボックス、富士ゼロックス、一般社団法 T.M.C.Nの共催のもと、デジタルハリウッド大学で開催された。
今年で2度目となるショッカソンを開催した背景が「VRの一般化」である。
Oculus RiftやGear VR、Playstation VRのような低価格で本格的なヘッドマウントディスプレイや、Google CardboardやMilbox Touchのようなダンボール製ゴーグルの登場によって活性化するVR業界において、課題の1つとされているのが、VR空間にある物体に触れる感覚(触覚フィードバック)が得られるインターフェースの開発である。
国内外の企業がさまざまなアプローチで触覚デバイスを発表する中、日本のスタートアップ「H2L」が開発した“ゲーム内の物体に触れる”触感型ゲームコントローラ「UnlimitedHand(アンリミテッドハンド)」は、9月にKickstarterで製品を発表すると同時に世界中から注目を集めた。
また、iPhone 6sなどアップルが2015年に発表した製品には、「Taptic Engine」や「3D Touch」などの触覚フィードバック機能が次々と搭載されはじめている。そのため、これまでVRや触覚技術に馴染みのなかった層が、あまり意識をせずに触覚技術を使いはじめている状況がすでに起きている。
ただし、VRに触覚技術が加わることで、これまでになかった新しい体験が可能になることは誰もが予測し、そのために必要な技術やデバイスも整いつつある中、実際にこれらを生かした新しい触覚体験ができる「コンテンツ」はまだまだ不足している。
ショッカソン2015は、こうした状況を踏まえ、「新しい触覚体験(製品やサービス)の創造」をテーマに、触覚の要素技術を研究する大学や、製品化に取り組む企業、新しいモノ・コトに敏感なクリエイターやエンジニアを巻き込み、圧倒的に不足している触覚体験の「コンテンツ」を、オープンイノベーションで生み出すべく企画したものである。
まず、今回のショッカソン2015のために大学や企業から提供された最新の要素技術や最先端デバイスなどを紹介したいと思う。今回は、5大学7研究室、10企業が協賛してくれた。
要素技術を研究する大学から提供された技術の代表的なものは、モノや身体が感じた振動(触感)を記録し、他のモノや身体にフィードバックできる(別の場所で同じ振動を感じることができる)、慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科の「Techtile Tool Kit」。
PC用マウスとその周囲にX状に糸が張られた東京工業大学佐藤研究室のデバイス「SPIDAR-mouse」。マウスに内臓された4つのモーターで糸の張力を制御することで、ユーザーはPC画面に合わせて物に触れたような感触を味わうことができる。
そのほか、物体表面に配置した小さな電極からの電気刺激により触覚が提示できる、電気通信大学梶本研究室の「電気触覚ディスプレイ」といった技術が提供された。これらは、学会や展示会などに行かないと実際に触ることが難しい最新デバイスであり、新しいモノやコトが好きなショッカソン参加者にとって絶好の機会となった。
また、協賛企業からは、振動を利用して擬似的に「ゴム状のボタン」の触り心地や「ボタンの半押し」の感覚などを再現する、京セラの「Haptivity」技術を搭載したタッチディスプレイのデモ機。医療用品の開発と製造販売をするダイヤ工業より、圧搾空気を利用して指先の動きをアシストする「パワーアシストグローブ」など、まだ製品化されていなかったり、広く普及していない製品が多数提供された。
そのほか、IoTデバイスのプロトタイピングや教育に広く使われている、マクニカの「Konashi2」や「Uzuki」、ゼッタリンクスの「LittleBits」、触覚とは密接な関係のある楽器を販売するコルグより「ClipHit」や「Termini」などのデバイス。また、これらのデバイスを連携し制御するための開発環境としてユニティーテクノロジーズの「Unity」やマイクロソフトの「BizSpark」、SNSと各種デバイスを連携するためのプラットフォームとして、ヤフーがサービスを開始した「MyThings」などが提供された。
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