Microsoftは9月3日、Nokiaの携帯電話部門を買収すると発表した。2011年2月に両者がWindows Phone OSの戦略的な提携を開始してから2年半、今回の買収はスマートフォンだけではなく携帯電話業界全体やPC業界を巻き込む大きな変化を引き起こすだろう。
◇NokiaとMicrosoftに関する最近の動き
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◇NokiaとMicrosoftに関する2011年の動き
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NokiaとMicrosoftはWindows Phoneスマートフォンの開発・販売で二人三脚とも言える密な関係を続けている。だが今回のMicrosoftによる買収はNokiaのスマートフォン部門だけではなく、タッチパネル採用の携帯電話=「スマートデバイス」のAshaシリーズ、そして従来型の低価格な携帯電話を含む、Nokiaの「デバイス&サービス事業部」すべてとなる。同部門の買収金額は37億9000万ユーロで、これによりMicrosoftは携帯電話事業に本格的に参入するだけではなく、いきなり販売シェア2位という業界に大きな影響を与えるポジションをつかむことになる。
Nokiaは主力ビジネスである端末事業を売却した後も、ネットワーク事業の「Nokiaソリューションズ&ネットワークス」(NSN)、ロケーションサービスのNokia「Here」事業、そして保有する通信特許のライセンス事業の3部門を柱として再建を図る。このうちHereや特許、そしてNokiaのブランドはMicrosoftへライセンス提供が行われ、その金額としてMicrosoftは16億5000万ユーロを支払う。買収に関わる費用は合計54億4000万ユーロとなり、今後は当局の承認などを得た上で2014年1Qの買収完了を見込んでいる。
Microsoftの携帯電話事業への参入はこれまでも噂が絶えなかったが、今回が初めてのことではない。過去には2008年2月にスライドキーボードを備えた「Sidekick」を開発・販売していたDangerの買収や、2010年4月に発売したものの2カ月で市場撤退した「KIN」の投入など、ポストPCを目指した動きはこれまで何度か行われてきた。
だがWindows OSやオフィスアプリなどで世界シェアを圧倒するソフトウェア企業の同社が、ハードウェアを手がけたからといって簡単に売り上げを伸ばすことは難しかったのだ。2013年2月に鳴り物入りで販売をスタートしたWindows 8タブレット「Surface」シリーズの各国での相次ぐ値下げも、ハードウェア事業が一筋縄では行かないことを如実に表している。
とはいえPCやタブレットはすでに各メーカーから多数の製品が販売されており、Microsoftの自社製品の販売数が業界全体に与える影響は微小だろう。一方、Windows PhoneはスマートフォンOSのシェアでBlackBerryやSymbianを抜き3位につけているが、2013年2Qの状況をみるとAndoroidの79%、iOSの14.2%から大きく引き離された3.3%と苦戦している(ガートナー調査)。
単体販売が基本のPCに対し、通信事業者の回線利用が必須な携帯電話・スマートフォンは販売ルートも販売ノウハウも大きく異なる。過去にいくつものスマートフォンOSを投入しながらもシェアを伸ばせなかったMicrosoftにとって、同社の最後の挑戦とも言えるWindows Phoneの開発・販売で長らく市場シェア1位の座を守り続けたNokiaとの提携は最良かつ唯一の選択だったのだ。
だがスマートフォンの開発スピードは年々加速化しており、Nokiaといえども他社の開発速度に追いついていくことは容易ではなかった。Microsoftもここ1~2年の業界の動きから、もはや他社との協業ではなく自社でソフトからハードまですべてを開発しなくては次世代スマートフォンの競争にスピードで勝てないという危機感を抱いていたに違いない。
Windows Phoneでは「シャーシ仕様」としてハードウェアの基本仕様をMicrosoftが制定、それに基づき各社が製品を開発する。しかし最新バージョンであるWindows Phone 8 OSの基本仕様はディスプレイ解像度やCPUスペックを比較すると、最新のAndorid OS搭載スマートフォンより一世代以上も前のスペックになってしまった。迅速に新製品を開発し市場に送り出すためには、自社でOSから製品開発までを行う「一貫体制」しか生き残る道は無いのだ。Nokiaの買収は、MicrosoftのWindows Phone OSにかける意気込みがこれまでにないほど高いものになっている表れなのである。
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