「もしドラ」に見るヒット作の生み出し方--著者の岩崎氏がCEDECで講演

 パシフィコ横浜で開催されたゲーム開発者向けイベント「コンピュータエンターテインメントデベロッパーズカンファレンス2012」(CEDEC 2012)。8月22日には、「『もしドラ』xCEDEC~ミリオンセラーを狙う為の秘訣~」と題し、ベストセラーとなった書籍「もしも高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を呼んだら」(もしドラ)の著者である岩崎夏海氏を招いたセッションが行われた。

 もしドラは、高校野球部の女子マネージャーが、マネージャーの仕事のためにピーター・F・ドラッカーの「マネジメント」を間違って買ってしまったところから始まり、部内の意識改革を進めて甲子園を目指す青春物語。発売直後から話題となり、累計270万部を超えるベストセラーになったほか、アニメや映画などさまざまな展開も行われた。

 著者である岩崎夏海氏はかつて作詞家の秋元康氏に師事し、放送作家として「とんねるずのみなさんのおかげです」や「ダウンタウンのごっつええ感じ」といったテレビ番組の制作に参加。アイドルグループ「AKB48」のプロデュースなどにも携わっていた。初めての著書となるもしドラを執筆したのちも、さまざまな著作を手がけている。

鉄板の「17歳の女の子」と異質なものを組み合わせたのが「もしドラ」

 まずは、もしドラが誕生したきっかけについて語られた。もともと岩崎氏は世に出た素晴らしい作品やメガヒット作品がどのようにして作られ、ヒットに至ったのかを分析するのが好きだという。ヒット作に共通するのは「最初はみんなから笑われる、馬鹿にされる」という要素で、他人に相手にされない夢物語を実現していくサクセスストリーの重要性を訴えた。そして「ヒット作品を作る人は心構えが重要」と付け加えている。

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岩崎夏海氏

 最初から200万部を売ることを目標に立て、そこから200万部を売るにはどうしたらいいかを逆算して考えていった。そのころにヒットしていた書籍に「夢をかなえるゾウ」や「ホームレス中学生」などがあり、これらに共通するのは「作家として無名であること」。さらに当時の風潮として「脳トレ」に代表されるような役に立つものや知識を吸収したいという雰囲気があったので、これらをストーリーと上手く組み合わせることができれば、訴求力のあるものになると感じたという。

 もしドラの主人公は女子高校生だが、これは岩崎氏が経長年験した芸能界、ひいてはコンテンツ業界におけるひとつの鉄則であると説明。「キャラクターの属性の中で、鉄板なのは17歳の女の子なんです。18歳だとオバサンと思われ、16歳だとロリコンだと思われる」。そしてなぜそう思うかを考えた末に出した岩崎氏の結論は「日本人の男性は9割9分がロリコンなんです。本当は13歳ぐらいが大好きなんですけど、自粛の意識が働くんです。17歳は妥協点でストッパーが外れる年なんです」

 当時「ダ・ヴィンチ・コード」が流行っていたこともあり世間に知識欲が高まっていたことから、17歳の女の子がなにか異質なものに出会う、知識とエンターテイメントの融合を考え、”異質なもの探し”を行っていった。ちなみに「『よくドラッカーと女子高生を結びつけましたね』と言われますが、それは違います。女子高生にドラッカーを結び付けたんです」

 そしてドラッカーのマネジメントとの出会いは、当時相当遊んでいたというオンラインゲーム「ファイナルファンタジーXI」がきっかけだったという。「あるプレイヤーブログを見ていたら、ドラッカーの『マネジメント』を読んで仲間をまとめ上げているとあったんです。そして『マネジメント』読んだら、これこそ女子高生に結びつけるコンテンツだと感じました」

 またストーリーついては、映画「がんばれ!ベアーズ」からヒントを得た。この映画が原型として持つ力を、ここで組み合わせたという。「『マネジメント』を読んだら、マネージャーというキーワードがあった。マネージャーといえば高校野球しかない。ここで女子高生のマネージャーが読んだら面白いと思ったんです。思いついたのは一瞬ですし、この段階でストーリーはほぼ決まってました」

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