私的録音録画補償金制度の見直しを議論する、文化庁の文化審議会著作権分科会「私的録音録画小委員会」が、12月16日に第5回会合を開催した。10月20日に行われた前回の会合で示された骨子案をもとにまとめられた報告書案が了承され、同委員会は閉会となった。
同委員会は2006年1月に作成された文化審議会著作権分科会報告書を受け、同分科会の下に設置されたもの。同年4月から私的録音録画補償金制度の抜本的な見直しの必要性について審議を続けてきた。
2007年10月に中間整理としてまとめられた報告書では、私的複製問題の検討課題が整理された。以降、同委員会では「補償金制度」と「違法配信コンテンツの私的複製」の2つに議題を絞り、議論を続けてきた。
しかし、補償金制度の議論において、「DRMで私的複製は制限されており、補償金は不要」とするメーカー側と、「現在の技術的措置では著作権が完全に守られるとは言いがたい」と補償金制度の継続を主張する権利者側の間で調整が難航。同委員会の開催期限である2009年1月が迫り、「本委員会では一定の方向性が得られなかったことを前提に報告書をまとめた」(文化庁著作権課 著作物流通推進室長の川瀬真氏)と、文化庁は苦肉の策を講じた。
その結果、まとまった報告書案では「補償金制度の見直しは残念ながら関係者の合意を得られることができなかった」と明言。また、「3年にわたる小委員会での議論を通じてある程度整理されたところであり、小委員会での議論は今期で終了することが適当である」と結論付け、来年度以降同委員会の開催を継続しない方針を示した。
しかしその一方では「課題の緊急性に鑑み、議論を休止するのではなく、新たな枠組みでの検討が適当であると考える」とし、文化審議会著作権分科会における検討のみならず、文化庁を中心に、権利者やメーカー、消費者などの関係者が意見交換ができる場を分科会の枠組みとは別に設ける意向が盛り込まれた。
もう1点の議題となった著作権法第30条の適用範囲の見直しについては、「違法録音録画物、違法配信からの録音録画について、利用者保護に配慮した上で著作権法改正を行うことに賛成する意見が大勢であったことから、文化庁は所要の措置を講じる必要があると考える」と明記。違法録音録画物や違法配信からのダウンロードを禁止する改正法案を次期通常国会に提出する方針が示された。
同委員会の閉会にあたり、主査を務めた弁護士で東京大学名誉教授の中山信弘氏は「知財戦略本部から補償金制度の廃止を含めた抜本的な改革を行うというミッションをいただいていたが、合意が得られなかったことに主査として責任を感じている」と釈明。また「補償金制度は著作権問題の一部に過ぎないが、著作権法が直面しているデジタル問題を象徴するものだ」と、同委員会での議論の意義を改めて振り返った。
また、同委員会で調整役の中心となった、文化庁の川瀬室長は「関係者でバラバラに議論をしていて、本委員会が始まったときには論点も整理されていなかった。それがこうして公式の場に関係者が集まり、いろんな立場で議論して、課題が整理された意義は大きい」と委員会が果たした役割を説明。その上で「委員会で論点整理は終えたと思う。次はコンセンサスを得る作業に移りたいが、利権調整は審議会でやるものではない。外側に別の場を設けたほうがいい」とコメントした。
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