薄型液晶テレビで一気にそのブランドを高め、また最近では環境への取り組みを積極的にアピールしているシャープ。千葉幕張メッセで開催中のIT・エレクトロニクスのコンシューマー向け展示会「CEATEC JAPAN 2007」において10月2日、代表取締役会長の町田勝彦氏が「デジタルコンバージェンスが切り開く新しい生活」と題した基調講演を行った。
今回のCEATECのテーマにもなっているデジタルコンバージェンス。町田氏はまず、「デジタル技術や通信技術の発達によって、放送、通信、出版など異なるメディアがひとつに統合される『メディアの収束』を表すもの」とした、約10年前に米マサチューセッツ工科大学(MIT)のニコラス・ネグロポンテ氏による、デジタルコンバージェンスの定義を紹介。その最たる一例として、電話だけでなくメール、写真、ビデオ、音楽再生、ナビゲーション、電子マネー、ワンセグに至るまで次々と機能が追加され、進化し続ける携帯電話を挙げた。
また、シャープの主力製品でもあるテレビについても、「他の機器とのネットワークが組めるようになり、新たなデジタルコンバージェンスが見られるようになっている。地上デジタル放送の2007年の世帯カバー率は92%になり、累計1514万台の地上デジタルテレビが出荷されている状況だ。デジタル放送は世界全体を巻き込む大きな市場となるだろう」とし、今後はテレビがデジタルコンバージェンスのハブとしての役割を果たしていくというと期待を寄せた。
町田氏によると、液晶テレビは現在までに大型化、薄型化、高精細化という進化を辿り、シャープ製品に使われているマザーガラスの面積は、2004年1月の第6世代から2006年8月の第8世代に変わる中で約2倍になった。2010年3月までには、さらに約1.6倍に拡大するという。これについて町田氏は「単に『大きいことがいいこと』というのではなくて、我々のライフスタイルにケミカルに変化を与えている」と語り、今やテレビがインテリアの一部になっているとした。
また「デジタルコンバージェンスでは、技術の融合が大切」と述べ、シャープのAQUOSケータイが緊急開発プロジェクトと称した、全社横断的な組織によって開発されたエピソードを明かした。加えて「商品開発は人にある」と、人材開発の重要性を述べ、デジタルコンバージェンスの時代には、専門分野だけを極めた「I型人間」ではなく、その上に他の知識やスキルを身につけた「T型人間」が必要であると強調。他の講演先などでも語られている「技術者は多能工たれ」という持論をここでも展開した。
一方、エレクトロニクス製品の製造時や利用時に生まれる二酸化炭素問題に触れ、「デジタルコンバージェンス時代は地球環境問題への対策が重要」だとした。ブラウン管から液晶に変化することで、同じサイズのテレビの消費電力を半分に抑えることに成功したシャープの例を紹介し、「冷蔵庫もエアコンも買い替えたほうが消費電力を減らすことができる」と、社団法人電子情報技術産業境界(JEITA)の会長としても、業界を挙げてPRしていく意向を語った。また、現在、大阪堺市に建設中で2010年3月までに生産開始予定のシャープの新工場(スーパーグリーンコンビナート)を紹介し、液晶パネル以外にも薄膜太陽電池工場を併設する計画を明かした。
最後に町田氏は、デジタルコンバージェンスの課題として、セキュアな環境の構築と、著作権者の権利保護とユーザーの利便性のバランスを挙げた。さらに、肥大化する組み込みソフトへの対応と、機能が融合する新たなデジタル機器の輸出入に課税・非課税のグレーゾーンが存在する点を見直すべき重要課題だとし、JEITAとしても積極的に取り組んでいく意向を語った。
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