米Red Herringが京都で7月23日から2日間開催した「Red Herring 2007 Insights Japan」にて、ソニーの前会長兼グループ最高経営責任者(CEO)で、コンサルティング会社クオンタムリープの代表取締役を務める出井伸之氏が7月24日に登壇し、Red Herring会長兼発行人Alex Vieux氏によるインタビューに応じた。その内容はソニーのCEO職を退いてから感じることから、日本の起業環境の問題点、起業家たちへのアドバイスにいたるまで多岐に及んだ。インタビューはすべて英語で行われた。
出井氏:大企業はマインドセットを変えることで、生産性を大きく向上させられるということです。
例えばハリウッドに行っても、ソニーが所有するような配給会社もありますし、Steven Spielberg氏のような独立系の映画プロデューサー、映画監督もいます。もちろんこの辺りには俳優もたくさん住んでますね。
ハリウッドのSpielberg監督を見ていても、彼が興味深いテーマの映画やプロジェクトに取り組み始めると、みんなが集まってきます。いいアイデアには人が集まってくるものなのです。
ソニーは厳格にバーティカルな組織や工程に縛られています。すべてを自分たちで作り上げようとしているのです。大企業はこうしたマインドセットを変えることで、生産性を大きく向上させられるのではないでしょうか。
出井氏:垂直型の業界に挙げられるのは、自動車業界です。
これに対してIT業界では、TSMC (Taiwan Semiconductor Manufacturing Company)などが水平方向の展開をしています。世界最大のEMS台湾企業Foxconnでは、生産だけに3万5000人もの従業員が従事しています。その上のレイヤでは、日本のナレッジが台湾に流れ込んでいるわけです。
デジタルの世界ではスケールがものを言いますから、垂直と水平方向の業務をどう組み合わせるかがとても重要です。特に大企業にとっては重要な問題だと思います。
出井氏:すべての事柄を政府や大企業がコントロールし過ぎていることが挙げられます。ワイヤレス通信のWiMAXやWi-Fiもそうです。
WiMAXの開発に貢献する企業は世界中にたくさんありますが、日本企業はわずかです。これが日本の弱点です。
経済産業省は今もすべての産業のあらゆるセクターをコントロールできると思っているようですが、それは間違っています。すべての技術を管理するなど、不可能です。(経済産業省は)主だった技術をコントロール下に置くことはできても、ロングテールの部分に属する技術を管理することはできないと、考えています。
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