英国政府は、英国におけるデジタル著作権管理(DRM)技術の実装を禁止する要求を却下した。その一方で、同技術が消費者の権利を侵害する恐れがあることは認めている。
人々がソフトウェアや楽曲などのメディアを利用する方法を制限するDRMを、法律によって禁止することを求めたオンラインによる申し立てには、総勢1414名が署名した。英国政府の電子申請ウェブサイトに提出された同申し立てでは、DRMはデジタルダウンロードやCDを利用するために提供されている製品の選択肢を奪うと警告していた。
ブロガーであるNeil Holmes氏が作成した同申し立てでは、2006年に独立系議会組織All Party Parliamentary Internet GroupのDRMに関する調査についても言及している。 同グループは、2005年にソニーが音楽CDに使用したrootkitのようなプログラムなど、消費者の権利を侵害する技術に対する保護策を求めていた。
英政府は現地時間2月19日、同申し立てに対する回答を発表し、DRMは消費者に対し利益をもたらすこともあると主張した。
英政府はその回答の中で、「DRMは、技術的な保護策を適用する監視役としての役割を果たすだけでなく、コンテンツ企業に対し、消費者がコンテンツを利用する方法について前例のない選択肢を提供し、それに対して支払いたいと考える価格を設定することを可能とする」と述べた。
「消費者の権利も細心の注意をもって保護しなければならないことは明らかである。例えば、実際に販売されているものは何なのか、その商品を購入者はどのように、またどこで使用してもよいのか、どのような制約があるのかなどを、消費者が十分に知らされている必要がある」と英政府は付け加えている。
英国におけるDRMに関する議論としては、時期を同じくして他分野においても同技術の使用方法をめぐる論争が起こっている。Appleの最高経営責任者(CEO)であるSteve Jobs氏が2007年2月に入り、楽曲のDRMなしでのライセンス販売を呼びかけている。Jobs氏は、DRMの廃止により、音楽サービス間の相互運用性が促進され、ダウンロード可能な楽曲の販売は増加すると主張している。
ソニーが音楽CDにrootkiと組み込んだことが発覚した際には、激しい抗議活動が巻き起こった。ソニーのDRM技術は、顧客がソニー製のCDを再生しようとした際に、顧客自身も気付かないうちに、OSからも隠れるようにマシンにインストールされるものだった。これに対し、人々は購入製品の情報開示を受ける権利が侵害されたと主張した。rootkitソフトウェアは以前から存在しているが、ウイルスや悪質なソフトウェアの開発者がマルウェアの存在を隠す目的に使い始めたことを受けて、問題視されるようになった。
英国では、Open Rights Groupが、ユーザーの権利を侵害するとしてDRMのような技術に異議を唱えている。
Open Rights GroupのエグゼキュティブディレクターBecky Hogge氏は、DRMに関する問題は以前より広く知られるようになっていると考える。同氏はZDNet UKの取材に応じ「DRMが問題になることは過去には少なかったが、これを問題視する動きが消費者の間でも広がっている」と述べる。
Hogge氏はDRM技術が、ユーザーの行動を制約し、英国の著作権法で保障された個人の権利を制約すると述べる。著作権法では、批評や解説を目的とする場合のフェアユースが認められているが、コンテンツのコピーが全面的に禁止されれば、個人のこうした行為も制約されることになる。
「DRMは著作権を主張するためのものかもしれないが、方法として適切でない」(Hogge氏)
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
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