9年前にノートPC向けに売り出されたバッテリ技術が、ようやく日の目を見ることになるかもしれない。
ノートPCメーカーは間もなく、現在一般に使われているリチウムイオンバッテリの代わりに、リチウムポリマーバッテリを組み込む選択をする「可能性が高い」と、Sony ElectronicsのプレジデントStan Glasgow氏は米国時間12月6日の記者会見で語った。
リチウムポリマーバッテリは、充放電を可能にする成分としてリチウムを使っている。リチウムは揮発性が高い物質だが、リチウムイオンバッテリがリチウムをセル(金属包装)に詰め込むのに対し、リチウムポリマーバッテリではリチウムをポリマーゲル(高分子ゲル)の中に封じ込める。こうしたゲルを用いたバッテリには、リチウムイオンバッテリのようなエネルギー密度はないが、今ではそれも利点だ。
メーカー各社、特にソニーは、リチウムイオンバッテリのエネルギー密度(または容量)を売りにしてきた。こうしたリチウムイオンバッテリは内部でショートすると、連鎖反応が起きて発火する可能性がある。Dell、Lenovo、東芝、Apple Computerなどの企業はソニーと協力し、過去2年に一部のノートPCとともに出荷された膨大な量のリチウムイオンバッテリの回収に取り組んでいる。
「当社がリチウムイオンに詰め込もうとするパワーが過剰なわけではない」と、Glasgow氏は話す。
ポリマーバッテリはこれまで、メーカーや消費者が必要とするバッテリ寿命を維持できなかった。三菱電機は1997年、ノートPC「Pedion」にリチウムポリマーバッテリを搭載したが、これは不運な機種となった。同時代のノートPCと比べるとはるかに薄く、光沢のある金属の筐体を用いるなど、斬新な設計を売りにしたノートPCだったが、価格は約6000ドルと高額で、機械的な問題もいくつか抱えていた。
困難にも関わらず、リチウムポリマーが工業デザイナーの支持を保ってきたのは、ゲルパックなら機器の空いたスペースに押し込めるからだ。リチウムポリマー技術も年月とともに改良され、今では一部のメーカーが電話機に採用している。
リチウムイオンの危険性を受けて、非リチウムバッテリを発表した企業もある。Zinc Matrix PowerとPowerGenixは、ノートPCなどの機器向けに、亜鉛を使うバッテリを売り込もうとしている。Zinc Matrixは、バッテリの出荷開始予定は2007年だと述べている。ただし、ソニーのGlasgow氏の見解によれば、こうしたバッテリ技術が市場に出てくるまでしばらく時間がかかりそうだという。
「今後12カ月〜18カ月のうちに、何か新しいものが利用可能になるとは思わない」(Glasgow氏)
ほかに、MTI Micro Fuel Cellsなどいくつかの企業が、燃料電池の普及に挑戦する。これらの燃料電池では、メタノール燃料が薄膜を通過する過程で生じた電気がノートPCに供給される仕組みだ。
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
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