Web 2.0時代における大企業とベンチャーのアライアンス戦略とは

永井美智子(編集部)2006年10月10日 13時27分

 ウェブの新しい概念として注目されるWeb 2.0。確固たる定義はなされていないが、ユーザーが参加してコンテンツを作り上げる点や、サービス提供者がウェブアプリケーションのインターフェース(API)を公開して他社とのサービス連携を容易にし、新しいサービスを生まれやすくしている点などに特徴がある。

 逆に言えば、Web 2.0サービスを提供する企業は、他社とのアライアンスが不可欠になってくる。Web 2.0の世界ではどのようなアライアンスの形があり、どういった点に注意すべきなのだろうか。10月4日に開催されたイベント「IT Venture Alliance Forum 2006」では、サイボウズとゆめみ、電通とシリウステクノロジーズのアライアンス事例をもとにWeb 2.0時代のアライアンス戦略が語られた。

サイボウズ江幡氏とゆめみ深田氏 サイボウズの津幡氏(左)は「モバイルはユーザーに一番近い存在だからこそ、面白いことをしていきたい」と意気込む

 まず、サイボウズとゆめみの事例から見ていこう。両社はビジネスモバイル市場の開拓を目的として、2月に業務、資本提携をしている。サイボウズは2006年中に他社から通信回線を借り入れてモバイル通信サービスを提供するMVNO(仮想移動体サービス)事業に乗り出す考えで、ここにゆめみの技術を活用しようとしている。

 ゆめみとの提携に至った理由について、サイボウズ取締役副社長の津幡靖久氏は「サイボウズは(グループウェア事業がうまく行っているために)成功のジレンマに陥っており、外部からの刺激が必要だった」と話す。サイボウズはグループウェアの販売で成功を収めたものの、あくまでもPCからの利用が中心で、モバイルでも利用しているユーザーは全体の1割程度しかいないという。しかし社内の技術者はPCからの使い勝手にこだわるあまり、モバイルになかなか目が向かない。そこで、モバイル専業のゆめみと提携し、社内を動かそうとしたというのだ。

 ここまでサイボウズを動かしたのは、Googleに対する危機感だ。サイボウズはLotus Notesのようなクライアント・サーバ型のグループウェアをウェブアプリケーションに置き換えることでシェアを伸ばしてきた。しかし今、Google Calendarのように新しいウェブ技術を使った無料サービスが登場してきている。津幡氏は「ユーザーの囲い込みにとらわれると、ほかの企業にやられる可能性がある。自社で足りない部分は他社と提携、もしくは他社を買収して、事業の展開スピードを加速させる必要がある」と警鐘を鳴らす。

 「Web 2.0時代にはサービスを作り出すコストが下がり、技術的に他社との連携もしやすくなる。放っておけば、ほかの誰かが同じようなサービスをやってしまう。いかに自社をオープンにして第三者を巻き込むかが鍵だ」(津幡氏)

 一方のゆめみにとっては、グループウェアとモバイルの相性が良いことから、事業拡大が見込めるメリットがあると代表取締役社長の深田浩嗣氏は話す。「われわれのサービスを使うとユーザーの過去の行動履歴がわかるが、グループウェアにはユーザーの未来の行動が書かれている。この2つを掛け合わせることで、ユーザーが『こんな情報があったら嬉しい』と思うものが届けられる」(深田氏)

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