サンフランシスコ発--微小なロボットをいくつも組み合わせてコーヒーカップや模型のトラックを作ることは可能だろうか?Intelはそんな実験的プロジェクトを開始した。
ピッツバーグにあるIntelの研究所は、サンフランシスコで開催された「Intel Developer Forum(IDF)」で、カーネギーメロン大学(CMU)と提携して開発中の「Dynamic Physical Rendering」というテクノロジのコンセプトを発表した。最終的な目標は、自ら形を変える素材だ。
適切な電圧をかけ、ソフトウェアを与えると、平面状の素材が自動車の立体模型に形を変える。与えるパラメータを変えれば、今度は立方体に変形する。Dynamic Physical Renderingは、CMUのSeth Goldstein準教授が率いる「Claytronics」プロジェクトから構想が生まれた技術だ。
Intel側でこのプロジェクトの指揮をとるのは、Jason Campbell氏とBabu Pillai氏だ。「CADプログラムで描いた3Dモデルを眺めるのではなく、机の上に実物模型が姿を現すわけだ」とPillai氏は語る。「そして、ソフトウェアの制御によって模型の形を変えられる」
その仕組みはこうだ。まず、使用する素材はつながった1つの材料ではなく、膨大な数のシリコンの球体が集まったもので、球体の表面には、電磁石か静電気を利用するアクチュエータが配置されている。アクチュエータごとにかける電荷を変えると、球体同士が引き寄せ合ったり反発し合ったりする。球体が協調して移動することによって、素材全体がある特定の形をとる。
コンピュータで制御可能な素材は、まだ存在していない。しかしIntelは、素材を構成するコンポーネントのプロトタイプをいくつか製作している。たとえば、シリコンを多くの腕が突き出た星形に切り取ると、材料に働く応力によって球状になる。Intelはこの方法で直径1mmのシリコン球体を作った。
研究グループは、少数のアクチュエータでコンポーネントを動かす実験も行った。あるデモンストレーションでは、周囲に電磁石を並べた2つの円筒形のコンポーネントが、互いにくっついたり離れたりしながら平面上を進んでいった。コンポーネント自体が移動のための機構を持っているわけではない。
Pillai氏によると、今のところ球体とアクチュエータを別々に作っているが、将来は、標準的な半導体製造プロセスを使って同時に製作できるかもしれないという。まず、シリコンウエハの表面にアクチュエータの入った層を置き、その上から球体を支える骨格となる材料をかぶせる。それから、シリコンウエハを星形に切り取る。応力が働いてシリコンが球状になると、アクチュエータの層が表面にくる。だんご虫の殻のような感じだ。
プロトタイプは、ハードウェア部分ならほぼ5年以内に用意できると、Pillai氏はみている。
しかし、それはまだ容易な部分だ。球体の動きを制御するソフトウェアを作るのは、はるかに難しい仕事になりそうだ。
「1000万個のボールを協調して動かすには、どんなプログラムを書けばいい?」と、Pillai氏は質問してきたが、もちろん答えを期待しているわけではない。「本質はつまり、ある制約の中で互いにぶつかり合いながら動く、多大な台数のロボットを制御するロボットシステムだ」
Pillai氏とCampbell氏は、1ステップごとの動きを前もって決める必要のないプログラムの開発が解決の糸口になると考えている。これを示すシミュレーションプログラムも公開された。デモンストレーションでは、光る点で表された4万個のロボットが画面上を動き回っていた。ロボットに与えられた指示は1つだけ--他のロボットとの間に隙間を作るなということだ。一方でコンピュータは、ロボットが動き回れる範囲を設定する。
シミュレーションでは、5つ並んだ四角形にグループ分けされたロボットが押し合いへし合いしながら移動し、数分後にはI-n-t-e-lというロゴを形作り始めた。
この課題が解決できたとしても、次は3次元空間の中で球体を協調して動かすという問題を克服しなければならない。
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
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