さらに悪いことに、グラフィックスチップは売価がほかよりはるかに低い。
90年代後半、グラフィックスチップメーカーは40社以上あった。だが、その大半は赤字を出し、倒産と合併吸収が相次いで、市場にはATIとライバルのNvidiaの2社しか残らなかった。
両社はその個性が異なっていた。ATIは、PCメーカーが採用しやすい姿勢を強調し、比較的低価格のチップをタイミング良く投入した。一方のNvidiaは、ゲームマニアのための選択肢として大々的な売り込みをかけた。
その後、ATIとNvidiaは成長を続け、だいたいにおいて利益を確保してきたが、競争の厳しさは今も変わらない。インターネット時代に首位に立ったATIは、何度か製品の遅れを出したことでNvidiaにその座を奪われた。NvidiaはMicrosoftの「Xbox」ゲーム機の契約も獲得したが、6カ月契約をふいにしてしまい、ATIが首位に返り咲いている。
2005年度も利幅は依然厳しい状況が続いており、ATIは、在庫の償却などもあって22億ドル相当のチップを販売してわずか1700万ドルしか利益を計上できなかった。ATI製チップの多くは最終的にIntelベースのコンピュータに搭載されるため、このビジネスは縮小する可能性がある。ATIの直近の四半期決算は、チップの売上が6億5200万ドル、利益が3100万ドルだった。
この買収のもう1つの付随的メリットとして、AMDは、Intelの製品計画を早い段階で入手できるようになる可能性がある。これは、ATIがIntel互換のチップセットを提供しているためだ。チップセットを製造するには、メーカーが早い段階からプロセッサデザインなどの各種説明を受ける必要がある。ATI買収後のAMDをこのようなミーティングに出席させないと、AMDの弁護士が独禁法違反を主張してくる可能性がある。
その反面、ライセンス契約が非常に複雑だ。その多くでは、知的財産のライセンスは基本的に新しい所有者にはわたらない、という条項が規定されている。AMDは既に、Intelとの間で複雑なライセンス契約を交わしている。これはまもなく更新されるが、IntelとATIの契約にある無効化条項をすべて無効にする条項が規定される可能性がある。
今のところ、今後の展開がどうなるのかは微妙な状況だ。
Intelの広報担当Chuck Mulloy氏は、「われわれは、あらゆる部分の調査を進めているところだ。提案されている買収についても調査しなくてはならない」と述べている。
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。 海外CNET Networksの記事へ
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