MercExchangeがオンラインオークション大手のeBayに対して起こした特許権侵害訴訟で、米最高裁判所は米国時間5月15日、判事団の全員一致で、eBay支持の判決を下した。この判決により、将来、一部の特許権保有者が特許権を侵害している製品の製造、販売を差し止めるのが困難になる可能性がある。
口頭弁論からおよそ6週間後の15日に最高裁の判事らが下した判決(PDFファイル)は、連邦巡回控訴裁判所が、バージニア州に拠点を置く小規模企業のMercExchangeが保有する特許をeBayが使用することを禁じる終局差し止め命令を下したのは誤りだったという内容だった。
この差し止め命令は、2003年に陪審員団が、eBayの「Buy It Now」機能がMercExchangeの創設者、Tom Woolston氏が保有する2件の特許を侵害したと認定したのを受けて下されたが、最高裁の審理中は保留されていた。「Buy It Now」機能とは、eBayのオークションサイトのユーザーが、オークションに参加せずに固定価格で品物を購入できる機能だ。
Clarence Thomas判事が作成した11項から成る多数意見の中で、判事らは、いずれの裁判所も連邦法に規定されている多くの要素を「適切に」適用しなかったと結論づけ、下級裁判所での再審を命じた。
MercExchangeは今回の最高裁判決について落胆はしていないとし、下級裁判所が再審の上、再び差し止めによる救済を同社に与えるとの自信を崩していないと語った。一方のeBayは、最高裁判決に「満足」しており、下級裁判所も差し止めは不適切との判決を下すと確信している、との声明を発表した。
3月29日に最高裁判所で開かれた口頭弁論で、eBayは、控訴裁判所の(特許法の)解釈が、「ほぼ自動に執行される」差し止め命令につながったと主張した。同社は最高裁判所に対し、各裁判所が差し止めの妥当性を決定する際に、連邦法に規定されている「4つの要素」で構成されるテストの検討を義務付けるよう強く求めた。このテストでは、公益以外の要素も考慮の対象となる。例としては、差し止め命令を下さなければ特許保有者が回復不可能な損害を被るか、あるいは、金銭賠償など、他の救済策で十分ではないか、などが挙げられる。
最高裁はeBayの主張を受け入れたようだが、Thomas判事は「(テストを検討するにしても)、われわれは今回のケース、あるいは、実際に特許法の下で起こっている他の多くの紛争において、終局差し止め命令による救済を与えるべきか否かについて特定の立場は取らない」と指摘した。
今回の最高裁判決により、大手企業が特許権侵害訴訟で自社製品に対する差し止め命令が下されるのをより容易に回避できるようになってしまう可能性があるが、一方で判事らは、個人の発明家の権利を保護しようともした。
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