Research In Motion(RIM)は3月はじめ、特許権侵害訴訟の影響で、幅広い人気の同社サービス「BlackBerry」が閉鎖の危機に直面した。このことからもわかるように、特許権侵害に基づく裁判所の差し止め命令は、破壊的効果をもたらす可能性がある。
オンラインオークション大手eBayは、同社が「ほぼ自動的に執行される」と呼ぶ差し止め命令を阻止する目的で訴訟を起こしている。この訴訟について米最高裁判所は米国時間3月29日、その差し止め命令を下すのに適切な時期を審理する。
2005年3月に連邦控訴裁判所は、eBayの「Buy It Now」機能が、MercExchangeの保有する特許を侵害していると判断している。バージニア州に拠点を置く小規模企業のMercExchangeは複数の特許権を保有しており、同社も大規模な電子商取引に関する計画をかつて独自に立てていたと主張する。
特許権侵害訴訟の大半は難解で退屈なものだが、この裁判は異例ともいえる多くの注目を集めている。その1つの理由として、つい先ごろBlackBerryが閉鎖の危機に追い込まれたという点が挙げられる。米国の大手ソフトウェア企業、ハードウェア企業、インターネット企業の多くはeBayを支持する声明を発表したが、個人の発明家や大手製薬会社はeBayに批判的だ。
「法律問題は難解に思えるかもしれないが、この裁判が実質的に与える影響は極めて大きくなる可能性がある」と、サンフランシスコに拠点を置くFenwick & West法律事務所の特許訴訟専門のパートナー弁護士であるMichael Sacksteder氏は語る。
eBayが争っているのは、現行の特許法の解釈だ。同社は、現行の特許法は、ほぼ自動的に差し止め命令を下すのみで、(差し止めを命じられた企業の)財務状態に壊滅的な影響を与える可能性があると主張している。一方のMercExchangeは、eBayに対する差し止め命令は、発明家が特許侵害訴訟で勝訴するために何世紀も前から存在する伝統的な救済策に一致すると主張している。
特許が侵害されている事実を裁判所が確認した後、差し止めを求める権利が特許権保有者に与えられるべきだ、という意見に反対する者はいないようだ。しかし、いかなる法的基準を適用すべきかという重要な詳細事項については意見が激しく対立している。
「自動的な」差し止めを認める基準は、シリコンバレーに拠点を置く多くの企業を悩ませているようだ。例えば、特許を受けた5000種類もの部品で構成されるマイクロプロセッサを製造するメーカーが、無意識とはいえ特許を1つでも侵害した場合、認められる基準によっては、損害賠償金の支払いのほか、製品を市場から回収する、あるいは、多額の費用がかかる次善策を講じる必要性がでてくるという。
また、これらの企業は、同基準が「パテントトロール」という災難の増大を助長するのではと懸念している。パンテントトロールとは、自分の発明品を商品化する代わりに、特許ポートフォリオとして保有し、いつでも特許侵害訴訟を提起できる体制を整え、訴追された特許権侵害者に対し高額なライセンス契約の締結を迫る人々を指す。
American Innovation AllianceのエグゼクティブディレクターMakan Delrahim氏は、「実際に製品を販売している企業は、身代金目的で身柄を拘束されているようなものだ」と述べ、さらに「そのため、それらの企業が発明品を商品化するためのコストが増大するだけでなく、それらのコストが米国の消費者が購入する製品の価格に上乗せされることになる」と語った。
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
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