IBMの研究者が、カーボンナノチューブを使ったICをつくり出した。同社によると、これは今もてはやされているカーボンナノチューブを市販の機器に利用できる日が来ることを証明するものだという。
同社の研究者らがナノチューブを使って製造したのはリングオシレータ。オシレータは、「true(真)」と「false(偽)」を表す2つの電圧レベルを切り替えるもので、チップ設計者がしばしばテストに利用している。このオシレータは、シリコン製の同等品と比べると動作速度は遅いが、今後搭載機器やナノチューブ回路が登場してくれば、特定の条件下でナノチューブがどう動くかを、IBMなどが詳細に調査できるようになる。
IBMは、以前にもナノチューブを利用したトランジスタを開発しているが、ICはそれよりも複雑だ。トランジスタは基本的にオンとオフを切り替えるスイッチだが、ICはそのトランジスタを集めて1つの機能を実行する。IBMの科学者らは、リングオシレータを使うことで、改良版カーボンナノチューブトランジスタと回路のテストを行い、完成したチップデザインでのパフォーマンスを計測する。
IBM ResearchのT.C. Chen博士(Science & Technologyバイスプレジデント)は、「カーボンナノチューブ製のトランジスタには、最高の技術水準を持つシリコン型デバイスを性能で上回るポテンシャルがある。ところが、科学者はこれまで、個々のカーボンナノチューブトランジスタの加工や最適化を重視してきた。だが、これでカーボンナノチューブ回路のポテンシャルを完成回路で評価できるようになる。これは、既存のチップ製造技術への同技術統合に向けた重要な一歩だ」と、声明のなかで述べている。
カーボンナノチューブは、簡単に言うと1枚のカーボン紙のようなもので、驚くべき特性を持っている。金属よりも電気の伝導効率が高く、鋼鉄より強く、発光もする。小型で高速なコンピュータチップから軽量航空機まで、いずれはこれが何にでも利用されるようになる、というのが大方の予想だ。
カーボンナノチューブは現在のところ、一部のメーカーが、軽量化と製品強度の向上のために自転車の部品やテニスラケットに採用している。だが、体内への薬剤注入目的でチップやデバイスにナノチューブを組み込むまでにはまだ数年かかるものと思われる。
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」