Intelは今週、ムーアの法則、さらには半導体業界全体の進化をあと10年継続させるのに役立つトランジスタのプロトタイプを発表する計画だ。
Intelと英Qinetiqが共同設計したこのトランジスタは、従来のトランジスタと同様に、ソース(電子の発生源)とドレイン(最終到達先)をチャネルで接続する構造となっている。チャネル間の電子の流れはゲートがコントロールする。ソースからドレインへの流れをコントロールすることで、計算処理の1と0が決まる。
一方、従来のトランジスタと異なるのは、チャネルに使われているのがシリコンではなく、インジウム(In)とアンチモン(Sb)の化合物であるアンチモン化インジウムという点だ。これら2つは、元素周期表上の並びから、化学用語ではIII-V族元素と呼ばれている。これに対して、シリコン(Si)はIV族になる。これらが近接しているということは、インジウムおよびアンチモンをシリコンと比較したとき、特性は近いものの反応が異なることを意味する。
Intelによると、シリコンの代わりにアンチモン化インジウムを使えば、パフォーマンスを50%向上させながら消費電力を10倍削減できるという。
同様に重要なこととして、III-V族の素材なら既存の製造プロセスに組み入れることもできる点がある。これにより、トランジスタの大量生産を、カーボンナノチューブトランジスタやシリコンナノワイヤといった概念より簡単かつ低コストにできることになる。
Intelの広報担当者によると、III-V族トランジスタを搭載したチップは、2015年までには市場に投入できるかもしれないという。実験用のトランジスタは今のところ、通信用チップの一部で利用される高価なガリウム砒素の回路基板を利用している。次の段階では、これらIII-V族トランジスタをシリコン回路基板上に搭載することを試みる。
Intelは以前、III-V族素材はムーアの法則を延命させるための主要なアイデアの1つだと語っている。チップ上のトランジスタ数は2年毎に倍増する、というのがムーアの法則だ。トランジスタ数の倍増は、主にそのサイズ縮小によって実現され、パフォーマンス向上につながっている。しかし、トランジスタのサイズが小さくなると、電流の漏れと熱の放散が発生する。これら2つは、コンピュータメーカーやチップ設計者にとって重大な問題だ。そのため、研究者らは、漏電と発熱の問題に対処する新しい素材やトランジスタ構造の開発に取り組むようになった。
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
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