Microsoft会長のBill Gatesは10年前、インターネットブームの到来に備えるよう注意を促すメモを社員に送った。そのGatesが先ごろ、再び社員に対し、ウェブベースの広告収入によって支えられるソフトウェアからの挑戦に目を向けるよう号令を発した。先週、同社は「Windows Live」「Office Live」という2つのオンラインサービスに関する計画を発表した。先月末に送られた以下のメモのなかで、Gatesはオンラインの現状に関する自身の見方を示している。
差出人:Bill Gates
送信日時:2005年10月30日 9:56 PM
宛先:幹部社員および直属の部下、上級エンジニア
件名:インターネット・ソフトウェア・サービス
Microsoftはこれまでずっと、ソフトウェアビジネスにおける変化を予期し、先導的立場に立つべく行動してこなければならなかった。
10年前の12月、私は「押し寄せるインターネットの波("The Internet Tidal Wave")」という題名のメモを書き、インターネットがコンピュータ業界の勢力図をすっかり塗り替えていくことについて説明した。当時、われわれの製品は来るべき大きな変化に備えられるか、それとも大波に押し流されてしまうかの岐路に立たされていた。われわれは、迅速な技術革新を成し遂げるべく全力投球した。そして、ソフトウェアのブレークスルーを実現するためのアプローチを新たにつくり出すわれわれの能力に対して、疑問を投げかける多くの業界識者の見方を見事に裏切り、業界の先頭に立った。
5年前、われわれは「.NET」に戦略の焦点を合わせ、XMLとウェブサービスを重視するという大きな賭けにでた。われわれは、これらの標準を推し進め、それを製品に組み込むという点で業界をリードする立場に立ったが、これもわが社の成功にとって重要な要因となっている。今日では、Fortune 100企業の92%以上が.NETを利用しており、またXMLおよびウェブサービスを中核に据えた最近の製品群も、2000年に打ち出した大胆な戦略のおかげでシェアを伸ばしている。
今日における成功の鍵は、インターネットを利用して、ソフトウェアをさらに強力にすることにある。このためには、新たな機能を提供しながら、IT部門や開発者の仕事を簡素化するようなサービスモデルをソフトウェアに組み込むことが必要になる。
多くの点で、これはまったく新しい考え方というわけではない。われわれは、1998年の株主総会の時点で、ソフトウェアがサービス化していくというビジョンをすでに示していた。われわれは、その時以来、継続して投資を行っている--例えば、WindowsやOffice製品に組み込んだ「Watson」サービスによって、われわれやパートナー企業は、ユーザーがどこで問題に直面したかを理解できるようになり、ユーザーのエクスペリエンスを向上させることが可能になった。また、オンラインヘルプ機能によって、どのようなトピックがユーザーに役立っているのか、そして変更する必要のある点はどれかというフィードバックを得ることが可能になった。MessengerやHotmailといったMSN製品については、1年を通して何回も機能追加のアップデートを行うため、技術革新の成果を迅速にユーザーの手にもたらすことができる。さらに、Mappointサービスは、これに登録した企業がウェブベースのAPIに接続できるようにした点で他社に先駆けたものだ。
しかしながら、業界の先頭に立つためには、もっと多くのことをする必要がある。広範で豊富なインターネットの基盤のおかげで、アプリケーションやエクスペリエンスがインターネットを通じて数百万のユーザーに瞬時に行き渡るという「サービスの波」が押し寄せてくるだろう。広告は、サブスクリプション料金やライセンス料金のように、ソフトウェアやサービスの開発費および流通費を直接的あるいは間接的に担う強力な手段として新たに登場してきた。数千万、数億という数のユーザーを視野に入れたサービスは、企業や規模の小さなビジネスにもたらされる解決策の質やコストを劇変させることになるはずだ。
われわれは、インターネットサービスを柱とした戦略を立て、また幅広いサービスAPIを提供し、それらをわれわれの主要アプリケーションすべてに利用していく。
来たるべき「サービスの波」は、非常に破壊的なものとなるだろう。こういった機会をとらえ、われわれに挑戦してくる競合他社は存在しているが、われわれのほうが優位に立てるチャンスがあるのは明らかだ。われわれは、どの企業にもまして、デジタルワークスタイルやデジタルライフスタイルの領域全体でエクスペリエンスとソリューションを実現するためのビジョン、資産、経験、意欲を備えており、またそれを大規模に実現し、すべての市場にいるユーザーや開発者、企業に届けることができる。
しかし、このチャンスを活かすためには、われわれがこれまでそうしてきたように、迅速かつ敢然と行動しなくてはならない。次世代のインターネットは、「草の根」的に浸透していくモデルに基づき、サービスやソフトウェア、そして時にはハードウェアの意図的な融合を通じてもたらされる、費用効果の高い「シームレスなエクスペリエンス」で創り出されている。われわれは、どういったものを誰のために開発しているのか、インターネットサービスモデルを踏まえた最善の新機能提供方法はどんなものか、この新潮流においてパートナー企業が儲けの大きいビジネスを作り出せるようにするプラットフォームは何か、われわれのアプリケーションをユーザーと企業の双方が使いたいと思うような、他にはないサービス指向のエクスペリエンスを創造できるようなものへと変化させる方法などの点について熟考しなければならない。
Steve(Ballmer)と私は先ごろ、Ray OzzieのCTOとしての役割を拡大し、3つの事業部すべてにまたがるわれわれのサービス戦略を率いる仕事を追加した。われわれは、わが社のサービスに関する課題やチャンスが、事業のほぼすべてに影響を与えると考えていることから、この決定を下した。Rayがソフトウェアに対する情熱の持ち主であることは、かなり昔から知られていることで、また彼はGrooveでの仕事を通して、ソフトウェアとサービスの組み合わせが持つ潜在力の大きさを理解するようになった。私はこのメールにRayがまとめたメモを添付するが、これは10年前に私が書いたのと同じくらい重要なものとして後に振り返られることになるだろう。Rayは、われわれやパートナー企業がインターネットサービスのアプローチをつかって実現可能な、素晴らしいアイデアを概説している。
次の大きな変化はもうそこまで来ている。われわれは、この変化をチャンスと認識しなくてはならない。この機会に提供する製品やサービスのレベルを引き上げ、業界内でわれわれが果たしている責任に見合ったやり方で競争していかねばならない。そしてわれわれの持つ資産と幅広い影響力を利用して、わが社の製品のユーザーや、顧客、パートナー、そしてわれわれ自身に利益をもたらすように、われわれは自分たちのビジネスをつくりかえていかなくてはならない。
Bill
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
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