楽天、TBS株式を買い増し19.09%取得--「どうして株を買っちゃいけないのか」 - (page 2)

別井貴志(編集部)2005年10月26日 17時55分

 こうした楽天の説明ではまだ疑問点が残り、質問が相次いだ。その質問と三木谷氏、副社長執行役員の國重惇史氏の答えを以下にまとめた(敬称略)。

--TBSから株を買い増さないようにという要請を受けているのに買い増したのは、先方から見ても、世間的に見ても敵対的と見なされるのではないか。また、TBS側が安定株主で50%以上を固めるという話が出ているが、これに対してはどう考えているか。

三木谷:安定株主化構想をしているとすれば、そういうやり方をしている一方で誰でも買っていい株を買ってはいけませんよというのは相反するようなことだと思う。この案件を非常に強く進めたいので、もし成就するとすれば、株の買い増しというのはわれわれにとっても、TBSの株主にとってもプラスになることだと思っている。

國重:買い増さないでほしいということに対して、我々としては「そうだとはお約束できません」というようなことはかねてから言ってきている。

三木谷:いままで一番最初から、われわれは一度も株を買わないとは申し上げたことがない。それに関していろんな方がコメントしているが、状況は少し変わってきているのではないかなあと思っている。それから、安定株主化構想ということに関しては、しっかりと株主利益が確保されているかどうかが非常に重要なポイントだと思う。

--TBSとの間で、質問状などのやり取りが始まったいま株を買い増したことになるが、そのタイミングにつては。また、横浜ペイスターズを売却するためにいろいろ根回しをしたとされているが。

三木谷:まず、質問状を受け取ったのは昨日(10月25日)のこと。なので、それから買い増したわけではない。先ほども言ったが、(株は)市場性があるものなので、交渉の進捗にかかわらず、どうして買っちゃいけないのか、それが僕には正直に言ってよくわからない。統合しようということであればそれはそれでいいし、どうしてもわからない。

それから、ベイスターズについての根回しは一切していない。ベイスターズに関してわれわれは影響力をおよぼすつもりも毛頭ない。しかし、もし統合できた場合にはいろいろと検討しなくちゃいけないことは出てくるだろう。

--TBSは、楽天の保有比率が20%を超えれば買収防衛策を発動するかまえだという話があるが、その場合はどう対応するのか。楽天のほうから妥協案を示すなど、第2の提案を出す予定はあるのか。

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「乱用的買収ではない」と國重氏

國重:買収防衛策については乱用的買収かどうかを判断してほしい。敵対的かどうかを判断することではないと考える。事業を一緒にやりましょうというのは、どう見ても乱用には該当しない。そのため、現段階ではこうした策が発動されることはないと考えている。妥協の提案があるかという点については、とりあえず我々はボールを投げた段階なので、現在それにつてのボールはTBSが持っていると考えている。

--今後の買い増しの計画は。20%超、30%超と株主としてより影響力をもつまで進むのか。

國重:株に関しての質問については株式市場に影響を与えるので一切答えられないスタンスで引き続きいきたいと思うので、理解してほしい。

--提案を成就させるためになぜ15%ではだめで、19%にする必要があったのか。買い増しにかかった資金はいくらだったのか。

三木谷:基本的に今回の提案が成就できれば、双方の株主の承認が必要になるが、そのときに何%確保できるかが非常に重要なポイントになる。中には反対する方もいるだろうが、少なくても我々は賛成しているわけで、そういう意味では15よりも19のほうが成就する可能性が高くなるということだ。

國重:かかった資金は全部合計で1110億円、先般の発表では880億円かかったとしているので、差し引き230億円になる。

--真っ先に利益を上げられそうなのは、インターネット通販とテレビ通販の融合だと思われるが、具体的にはどういう仕組みを考えているか。

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今回の提案をなんとしても成就させたい三木谷氏

三木谷:それだけを考えているわけではなく、テレビとネットの融合という大きな流れが起こっている中で、楽天の実際の損益からすると、インターネット通販に占める割合というのは30〜40%程度。バイアコムのような会社はもともとショッピングを中心にやってきたが、総合メディア企業に大きく変わってきた。ショッピングという小さな話ではなく、テレビの世界にもう1つインターネットという大きな軸を作るということ。楽天がやっているインターネットというのは、われわれが一番ではないところもある。しかし、いろいろな分野でかなりいいポジショニングにあることで、そういう意味ではメディア企業としてはTBS側からも提案がいろいろ出てくるだろうと考えている。

音楽配信にしても、昔は著作権の問題があるので難しいといわれてきたが、米国でiPodが登場して音楽配信が実現されると、日本でも結局そうなったわけだ。

國重:質問状を見ると、TBSはかなり真剣に検討して出されたものだと思った。具体的な話や数値などを交えた話は、TBSとの間ではやっていきたいと考えている。

--放送は2011年にデジタル化するが、放送局としては収益の多様化などデジタル化に関して不安感も抱いている。テレビというメディアはどうなっていくと考えているか。

三木谷:私の考え方でいくと、マスメディアとマイクロメディアという考え方が出てくると思っている。いままでは放送はマスで、インターネットはマイクロという考え方だった。テレビがインターネットにつながることで、この境界が非常に曖昧になってくる。そのためより一層どうやって放送の公共性を保てるかということを真剣に考えていかなくちゃならない。しかし、世帯普及率100%の影響力を持っているのはテレビのすごいところで、これ(境界が曖昧になること)をテレビ局の人はどちらかというと、脅威などと捉えずに機会だと捉えて積極的に展開するべきだと思う。それが提案の主旨でもある。

--通信と放送の融合では海外の話もあったが、かならずしも成功した例ばかりではないと思う。合併や経営統合しないと通信と放送は融合できないのか。通常の業務提携ではダメなのか。iPodもどこかと提携したから成功したわけではなく、むしろアップル1社で成功させたと思うが。また、いつから今回のことを考えていたのか。

三木谷:2005年というのは、インターネットとテレビの距離が非常に近づいてきた年と位置づけている。2011年のデジタル化という観点もあるわけだし。変化というのは急速に起きると思っているので、たぶん3年後ぐらいになったら、三木谷が言っていたことは正しかったなあと、思ってもらえるような状況になっているのではないか。インターネット業界で仕事をしている中で、非常に強く感じるようになった。これは、やはりブロードバンドの普及にある。2年前はたしかにストリーミングやインターネット放送に対して懐疑的な面はあったが、それが大きく変わった。

どうして共同持ち株会社でなければいけないかというと、そうじゃなければ成功しないと言っているわけではなくて、これ(楽天の提案)であれば完璧に利害が一致して同じ方向を向けるので、かなり成功の可能性が高くなると考えているわけだ。TBSが大きく変わらなくちゃいけないときに、自分の中から変革するというのは現実的にはけっこう難しい話だと思う。そのため、我々の会社と統合することによって変化のスピードは加速するのではないか。

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