インターネットイニシアティブ(IIJ)は6月20日、6月23日に予定していた東京証券取引所マザーズ市場への上場を正式に断念した。
株式の公募・売り出し期間だった6月15日から17日までの申し込みが、上場に必要な300人に達しなかったためだ。こうした、マザーズの上場基準で定める株式の分布状況を満たすことができなかったため、6月20日に開催した取締役会において、募集による2500株の新株式発行と1400株の売出しを中止することを決議し、この通知に伴って5月27日に承認された上場申請も取り消された。
IIJの公募・売り出し価格は、6月13日のNasdaq市場でのADR(米国預託証書、1ADRあたり2000普通株式)13.90ドルの邦貨換算値を基準に285万9886円に決まったが、ADRは申し込みが開始された15日には10.95ドルと、たった2営業日で21.2%も下落してしまった。株式市場関係者は、「このADRの下げを見て投資家が手を引いたのではないか」と言う声が多い。また、別の関係者は「今年のIPO(新規公開・上場)は好調な企業が多く、だからこそ何でも手がけるというわけではなく、少しでも不安な銘柄は避けられてしまうのではないか」と言う見方もあった。
上場を中止する見通しは6月17日の夜にIIJから公表された。これを嫌気して、Nasdaq市場に上場している同社のADRは、6月17日に出来高を伴って前日比3.58ドル安(33.5%安)の7.12ドルとさらに下げを拡大し、大幅続落した。
まだまだ「ネットワーク」そのものが研究対象として実験を重ねられていた時代である1992年12月に、WIDEプロジェクトの技術者らが独立して「インターネットイニシアティブ企画」というインターネットサービス事業を企画する企業が設立されたのが、IIJの始まりだった。
そして、1993年7月にインターネット接続の商用サービスを日本で初めて開始し、1994年には個人向けにダイヤルアップ接続サービスを開始した。今では有線、無線ともにブロードバンド接続があたりまえのように普及したが、こうした原点を考えると「インターネットにつなぎたい」という要望を日本で切り開いてきたIIJのおかげだと言っても過言ではない。しかし、2002年以降にブロードバンドへ移行する過程で戦略が狂いはじめ、経営も悪化していった(関連記事)。
これまでIIJは、「日本のインターネットの歩みはIIJと共にある」「インターネットの雄」とまで称えられてきた。「改めて上場を申請するかどうかは未定」としているが、不人気による異例の上場断念という失態は尾を引くだろう。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス