インターネットイニシアティブ(IIJ)は5月27日、東京証券取引所マザーズ市場への上場が承認されたと発表した。上場日は6月23日で、証券コード番号は3774を予定している。上場に伴い、普通株式2500株を新規に発行し、公募する。また、既発行株式のうち1400株を売り出す。今回の増資により、発行済株式数は3万8360株から4万860株に増える。
以前のIIJは堅実経営で知られたが、日本よりも米国のほうがインターネットに関する事業について理解が得られやすいことや、グローバル展開も視野に入れていたことで、1999年8月4日にインターネット技術の発祥の地である米国のNASDAQ市場に初めて株式を公開し上場した。
当時から日本での上場も考えていたそうだが、「e-Japan戦略が実を結ぶなど、インターネットの日米格差が縮まり、ブロードバンドでは日本が先行している感も強い。こうした現状を踏まえて、我々のメインマーケットである日本でのプレゼンスを強化し、さらに収益を拡大していくためには、いま日本で株式を上場するのが絶好のタイミングだと判断した」(同社IR担当者)と説明した。上場市場については「将来的な東証2部、1部市場での取引も視野に入れて検討し、総合的に判断してまずはマザーズの上場を決めた」(同)としている。
今回の公募、売り出しで調達する資金は18億8000万円を予定しており、設備投資や研究開発費に充てる。また、上場後の大株主と持ち株比率は、NTTが24.71%(上場前26.32%)、ヒーロー&カンパニー(実質NASDAQの上場分)が17.83%(上場前18.99%)、IIJ社長の鈴木幸一氏が5.98%(同6.37%)、住友商事が5.16%(同5.49%)、伊藤忠商事が5.11%(同5.44%)、NTTコミュニケーションズが4.99%(同5.32%)となる。
IIJのこれまでの歩みは、まさにNASDAQ市場での株価の歩みにすべて表れている(グラフ)といってもいいだろう。NASDAQでは、米国預託証書(ADR)が上場しており、1ADRあたり2000普通株式の比率だ。1999年8月のNASDAQ上場時にはインターネット株ブームもあって、公募価格23ドルに対して4カ月で一気に129.125ドルまで5.6倍に値上がりした。
その後、ネット株バブルが終焉したことに加え、IIJグループ自身の戦略も狂い始めていった。株価は、2001年から直近まで、だいたい上限を14ドル強、下限を2ドル割れとしたレンジ内の値動きとなっている。
IIJは、2002年7月に電力会社系のデータ通信を手がけるパワードコムと合併も視野に入れた事業の統合を検討すると発表し、注目を浴びた。これは、事実上日本において通信市場を支配していたNTTへ真っ向から対抗する勢力を作ろうとしたためだ。
しかしこの計画は正式合意には至らず、2003年3月に協議が打ち切られた。さらに、日本初のデータ通信専用の通信会社として、IIJやソニー、トヨタの3社による共同出資で1998年10月に設立され、IIJが筆頭株主だったクロスウェイブコミュニケーションズと、その子会社が、2003年8月20日に会社更生法適用の手続きに入った。これにより、一気に経営の先行きが懸念されて資本の増強などが急がれた。そして、結果的には敵対しようとしていたNTTグループに支援を要請し、2003年9月16日に第三者割り当て増資を引き受けてもらい乗り切った。
こうした経緯があったが、2005年5月13日に発表された2005年3月期通期の連結決算は、営業利益、経常利益、純利益がすべて黒字化して、NASDAQ上場以来の最高の利益を計上するなど復活を遂げている。そして、2006年3月期連結決算の予想では、営業収入が463億円3000万円(前年比11.1%増)、営業利益が23億2000万円(同85.9%増)、経常利益が39億9000万円(同26.7%増)、純利益が37億円(27.3%増)と2桁の伸びを予想している。
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