「本田技研工業は優れた製造工程というコア技術を生かして、製品群を芝刈り機からオートバイや自動車、小型ジェット機へと広げている。アドビはすべての人々のコミュニケーションをより豊かにするソフトウェアを核に市場を広げていく」---米Adobe Systems社長 兼 最高経営責任者(CEO)のブルース・チズン氏は3月5日、都内で開かれた記者会見で同社の戦略を紹介した。
米Adobe Systems 社長 兼 CEOのブルース・チズン氏 | |
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チズン氏はまず、アドビの製品が与えた影響を紹介。「世の中にあるほとんどの情報は何らかの形でアドビのソフトウェアによって実現されている」と話す。例えば写真データはPhotoshopが、ロゴやグラフィックはIllustratorが、そしてデジタル文書はPDFやAdobe Readerがそれぞれかかわっているというのだ。「アドビは社会に大きな影響をもたらした。もしアドビのソフトウェアがなければ、世界は今とはずいぶん違うものになっていただろう」(チズン氏)
数々のソフトウェアを提供してきたアドビだが、現在は製品を販売する企業からプラットフォームを提供する企業になったとチズン氏は話す。「3年前と今では違う会社になった」(同氏)。プラットフォーム企業とは、「ERPならSAP、データベースならオラクル、PCのOSならマイクロソフトのWindows、CPUならIntelのPentiumというように、革新的な技術を持ってパートナーのビジネスプロセスを支える基盤やソリューションを提供する企業」とチズン氏は説明。アドビもこれらの企業と同じように、自社のソフトウェアを核としたソリューションを提供する企業に生まれ変わったとした。
アドビが提供するプラットフォームは大きく3つ。大企業や官公庁向けのドキュメントソリューションであるIntelligent Document Platform、クリエイター向けのCreative Professional Platform、一般消費者向けのDigital Imaging Platformだ。チズン氏によると、この3つのプラットフォームは2003年度の売上の3分の1ずつを占めていたという。なお、2003年度の売上高は前年比11%増の12億9500万ドル。これは同社の過去最高の売上だ。
アドビは今後、Intelligent Document Platformに注力していく方針だ。米国では情報をデジタル形式で再入力するために年間約160億ドルが費やされているとチズン氏は指摘。Adobe Readerや同社のサーバ製品群によって、文書とバックエンドシステムを連携させるソリューションを提供していくとした。
日本はアドビにとって売上の約20%を占める世界第2位の市場であり、力を入れていくという。日本以外のアジア諸国の売上は3%強にとどまっているが、この点についてチズン氏は「売上ベースでは小さいが、マーケットシェアでは日本と同じ程度を占めている。売上が伸びないのは、海賊版の問題が原因だ」とした。
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