「成功の定義は上場とは限らない」--サイボウズ青野社長が語る「起業論」 - (page 3)

--中小企業向け製品の直販に限界点を感じることはありますか?

 すでに限界は感じています。リテラシーの低いお客さんに売っていくには直販では無理です。どうやって他の人を巻き込むかという売り方にしていかなければ難しいです。「サイボウズ Office」販売の主流も直販からパートナーへと切り替えています。ソフトバンクさんに扱ってもらったりして、間接販売への比率が上がってきています。

--最近では、サイボウズの製品がASPのモデルになってくるような話がありますが、ソフトウェア販売をやめて、全部インターネットでやってしまうことは考えていますか?

 その時代が来たときには切り替えられるように準備はしています。しかし、ASPへの流れはゆっくり進むと考えています。

--それがサイバーエージェントとのジョイントベンチャーである「cybozu.net(サイボウズ・ドットネット)」であるわけですか?

 古きよき時代を知っている人は、サイボウズはソフトを作って売る会社だと思っていますが、お客さんのニーズは変わってきています。まだ少数ですが、ソフトは買わずに使うだけでいいというお客さんも確実に増えてきています。それを提供できるだけのノウハウは、私達サイボウズにはありません。運用の仕方も知りません。だからM&Aでノウハウを持った仲間を増やしながら、新しい提供の仕方を見つけていくことをしているのです。

--ところで、MVNOをやっていますね。これはどんな発想から?

 まず、お答えする前に、MVNOの説明からしましょう。MVNOとは「Mobile Virtual Network Operator」といい、携帯電話などの無線通信インフラを他社から借り受けてサービスを提供するビジネスです。今はドコモ、au、ボーダフォンなどのキャリアがブランドを持って前面に立っていますが、これからはサイボウズのブランドで売っていいという時代がきます。

 M&Aでインフォニクスという会社と出会ったのですが、その会社がすでにこのビジネスに取り組んでいて、私達に教えてくれたんです。これによって、新しいビジネス形態が作れるわけです。

 現在、日本ではビジネスマンが携帯電話でゲームをやっている人を多く見かけますが、米国ではBlackBerryを持ってビジネスをしています。日本にはないのか。ないのなら自分達が取り組もうということで話が持ち上がりました。現在、テストサービスを一部で行っており、年内、年明けにリリースしたいと思っています。私達のブランドで出していく予定です。

成功の定義は上場とは限らない

--青野さんの個人的なな質問をさせていただきます。社長として、どんなメディアを読んで、どんな情報収集をしているのでしょうか?

 日経新聞、日経ビジネスを読んでいます。本は月に最低5冊は読みます。5月には22冊読みましたね。一冊全部読むのは時間を取られますから、必要なところだけ読みます。

--経営者になるとき、どうやって学習されましたか?

 本は読みましたが、独自のやり方をするのが好きです。経営者同士のネットワークにあまり入っていなくて、どちらかというとそういうところから仕入れる情報はありません。

--東証マザーズに上場したとき、どんな気持ちになりましたか?

 あまり何も考えませんでしたね。「ぼちぼち行くか」くらいの感じですね。

--一部上場で自身の考え方が変わったり、まわりの目が変わったと感じることはありますか?

 周りの目は変わったと思います。私も子供の頃から一部上場というと信頼の証というイメージがありますが、そういう目で見ていただいているという面があります。逆に言うと、一部上場のくせにという厳しい見方もされます。今まで許されていたことも許されなくなります。私達にとって次の成長をしていくのに、こういう厳しい目は非常にありがたいことだと思っています。

 それに、一部上場といっても1800社あり、その末席にいるわけです。これから本当に信頼のある企業になるように一歩一歩いきたいと思います。

--会社の成功を、ひとことで言い表すと何になりますか?

 最初に定義しなければいけないのは、会社の成功の定義です。それを「上場」とすると成功になります。しかしサイボウズは成功の定義を、「お客さんが喜ぶ、やっている私達も幸せを感じること」としてます。そういう意味ではまだまだ発展途上ですし、日々細かい成功を感じることもあります。

--今後、グローバル展開は、何をやろうとしているのか、そして、どういうことをやって世界進出をしようとしているのですか?

 主力の情報共有ソフトを世界に広げたいというのが第一にあります。以前に米国で展開しようとして失敗しました。日本のソフトに対して、米国人は興味を示さなかったのです。米国人にとってマイクロソフトはナショナルカンパニーです。基本的には国を挙げて応援してます。日本との文化の違いもあり、2005年に残念ながら清算することになりました。

 今考えているのは、アジアをターゲットにすることです。いくつかの良い条件があります。日本のソフトに対して評価が高く、興味を盛ってくれること、アジアには情報共有という文化があり、需要があることなど。確実に勝てる市場と成り得ると確信しています。

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