Googleの「Android」OSは自らの成功の犠牲者なのかもしれない。
2009年には、600万台以上のAndroid搭載携帯電話が出荷された。そして、2010年の出荷台数はこの3倍に増加し、2000万台に達する可能性もあると予測されている。しかし、IMS Researchの最新調査によると、Androidの急速な成長はより多くの分裂を引き起こす可能性があり、それによって、市場を牽引するスマートフォンOSとしてのAndroidの可能性が、最終的に損なわれてしまう恐れがあるという。
問題なのは、Androidのバージョン1.5からバージョン2.1にかけて、Googleがお互いに互換性のない4種類のバージョンをリリースしたことだ。
「分裂は、まず何よりも開発者にとって懸念すべき問題だ」とIMS ResearchのアナリストであるChris Schreck氏は声明の中で述べた。「よく知られているように、開発者向けリソースは限られている。そして、プラットフォーム内で互換性のないバージョンを既に飽和気味のスマートフォンOS市場に追加してしまうと、開発者の苦難はさらに大きなものになる」(Schreck氏)
Androidの全体的なインストールベースは、ほかのスマートフォンプラットフォームのインストールベースに比べるとはるかに小規模だ、とSchreck氏は主張した。そして、同一OSの様々なバージョンによって市場がさらに分割されてしまうと、どのAndroidバージョンの開発者も機会が縮小したように感じ始めるだろう。
「Googleがこの問題に対処しなければ、Androidはより少数のユーザーにリーチするために、より多くの労力を費やさなければならない羽目に陥るだろう」とSchreck氏は述べた。
IMS Researchの調査によれば、プラットフォームの変種が増えるごとにOSへの保守投資の額も大きくなるため、携帯電話ベンダーやモバイルネットワーク事業者も分裂の被害を受けるという。例えば、無線通信事業者と携帯電話メーカーはユーザーインターフェースやアプリケーションのカスタマイズ、さらにはデバイスにプリインストールされたほかのソフトウェアが製品ポートフォリオ全体で機能することの確認作業などに、余分なリソースを費やさなければならない。
Googleはこの問題の解決に取り組んでいるといううわさだ。1つ例を挙げると、GoogleはAndroidのメジャーアップデートのペースを落とすと見られている。さらに、アップデートが無線通信事業者を経由しなくてもいいように、Googleはユーザーが「Android Marketplace」からデバイスをアップグレードできるようにするとの憶測もある。
これらの変更によって分裂問題が解決するかは不明だ。そして、IMSはGoogleが対処できないかもしれない別の問題を指摘する。Androidが使用しているApache Software Licenseは、ライセンス利用者がAndroidプラットフォームに追加した修正点をGoogleに提供することを義務づけていない。Androidのオープンソースという特徴は革新にとって素晴らしいことだが、それはライセンス利用者が同プラットフォームに独自の変更を加えられることも意味している。このことは市場の一層の分裂を招く恐れがある。
Schreck氏は、同様にオープンソースOSである「Symbian」と「LiMo」プラットフォームはソフトウェアに追加する変更点の許可に関して、もっと厳格な基準を設けていることを指摘した。こういう措置を講じれば、プラットフォーム上で分裂問題が生じるリスクをある程度軽減できるはずだ。
「私はAndroidが近い将来、かなりの市場シェアを獲得すると見ている」とSchreck氏は話す。「しかし、とりわけハイエンド市場において、その成長のペースを維持するためには、Googleは分裂を確実に管理する必要がある」(Schreck氏)
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。 原文へ
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス