MediaFLOに必要なのは「認知度」--クアルコムが米国の状況を説明

 2007年より米国でサービスを開始し、2011年以降は日本での実施も見込まれている携帯端末向けの有料放送サービス「MediaFLO」。11月5日、米FLO TVおよびQualcomm MediaFLO Technologiesで代表を務めるビル・ストーン氏が来日し、米国での現状や日本を含む今後の展開などについて説明した。

 現在、米国ではVerizon Wireless、AT&Tの2大通信事業者がMediaFLOサービスを展開しているが、加入者数や端末販売台数など、状況を示す数値は明らかにしていない。こうした現状について、ストーン氏は「2009年中に全米をカバーする体制が整う。また、エリアごとのカバー密度も高まりつつある。これで移動中にもほぼ問題なくサービスが受けられるようになる」とし、これから本格的に普及する段階だと強調した。

米FLO TV代表のビル・ストーン氏 米FLO TV代表のビル・ストーン氏

 一方、依然として低い水準にある米国内での認知度を高めるため、車載型端末や放送専用端末といった携帯電話以外の受信端末を投入する計画であるという。これらの販売や受信契約は通信事業者ではなく、FLO TV自身が担当する。「VerizonやAT&Tによって決して喜ばしい話ではないだろうが、結果的に認知度が高まればサービス全体の活性化につながり、2社にとって悪いことではない」とした。

 また、配信蓄積型のクリップキャストや、文字情報などを送るIPデータキャストといったMediaFLOの特徴的機能が「世界中の標準化議論において一定の支持を受けている」と説明。欧州のDVB-Hや日本のISDB-Tといったモバイル放送サービス規格と同列、あるいは少し上をいく状況で議論が進められているとした。一方、ほかの規格と共存するためのチップ開発にも力を注いでおり、実際、KDDIなどが11月4日から開始した沖縄ユビキタス特区での実証実験でも、ワンセグ共用チップが使われている。

 さらに、iPhoneやiPod touchなど、すでに普及している端末でもMediaFLOサービスが利用できるよう、外付け端末も用意しているという。「米国では(日本での)ワンセグにあたるサービスがなく、携帯端末で映像を楽しむ文化もさほど発展していない。まずは様々な形でサービスを提供し、認知度を向上させることが急務だ」とストーン氏は話す。

 ただ、日本でのサービス開始見通しについては、クアルコムジャパン代表取締役会長兼社長の山田純氏が「総務省で周波数割り当てに関する公式な議論が開始されており、我々もその中で(MediaFLOを)活用していただけるよう努力をしている」と説明するにとどめた。なお、4日に開始されたユビキタス特区での実証実験では、30社のコンテンツプロバイダの協力を得て放送サービス、IPデータキャスト、蓄積型配信サービスなど正式サービスを想定した検証を進めている。

MediaFLO MediaFLOの受信端末

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