携帯電話でTV番組を視聴するモバイルTVについて、欧州の方向性が固まってきた。欧州連合(EU)は11月29日、モバイルTV規格「DVB-H(Digital Video Broadcasting Handheld)」を加盟国27カ国が統一して支持することに大多数の国が賛成したと発表、統一規格戦略を一歩進めた。
日本では昨年「ワンセグ」がスタートしているが、欧州ではモバイル向けTVサービスの進展が予想より遅れている。商用サービスがはじまっているのは、現時点でイタリアとフィンランドの2カ国。自分たちが採用したGSMをその後世界標準にしたというプライドもあり、EUとしてはモバイルTVでもリードをとりたいところだ。
だが、現在のモバイルTVは複数の規格が乱立している状態だ。そこで7月、EU諸国はDVB-Hで統一する構想を発表、同規格の採用を義務付ける方向で進めてきた。域内で利用する技術を統一することで、国境を超えた相互運用性を実現できる。モバイルTVも、GSMのように1つの標準を採用することで、無駄な争いを避けてサービス実装を一気に進めようという狙いだ。
EUが支持するDVB-HはフィンランドNokiaが強力にプッシュしている規格だが、もともとはEUの研究プロジェクトから生まれた技術。2004年に欧州通信規格協会(ETSI)標準となっている。
しかし、今回のDVB-H統一に反対する声もあり、英国、ドイツ、オランダなどの国が反対しているという。反対理由には、技術中立性や、統一標準採用には早すぎるという見解があるようだ。また国によっては周波数帯の問題もある。
反対している国のうち、少なくともドイツと英国では対立規格を利用したモバイルTVサービスが提供されている。ドイツは昨年の「FIFA World Cup」に合わせて「T-DMB(Terrestrial-Digital Media Broadcasting)」を利用したサービスがスタートしているし、英国では英Virgin Mobileが「DMB(Digital Multimedia Broadcasting)」ベースでサービスを提供している。また、衛星放送事業者の英BSkyBも米Qualcommの「MediaFLO」を利用した実験をスタートしている。
だが、昨年サービスインにこぎつけたVirgin Mobileは今年夏、来年初めでサービスを打ち切ることを発表している。最大の理由は、同社が契約していた英BTのDMBサービス「BT Movio」のサービス停止だが、それだけではなさそうだ。同社はスタート当初、女優のPamela Anderson氏を起用した大規模な広告キャンペーンを打ったが、加入者が伸び悩んだといわれており、利用できる端末も1機種しかない。
モバイルTVの離陸には、規格標準化以外にも課題がありそうだ。
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