今度は、複雑なサブシステムを伴うプロジェクトを想像してほしい。NASAの例えはIT業界にどう当てはまるのか。誰かほかのエンジニアが手を挙げて、自分が担当した部分によってプロジェクトの立ち上げが失敗する可能性があることを認めるときの恥ずかしさから解放してほしいという願いは常にある。これがMobileMeで起こったことであり、いわば、勇気の出し方が違っていたということだ。手を挙げて、まだ準備が整っていないからすべてを中止しようと上司に進言する屈辱に耐える知恵と勇気が誰にもなかった。その結果、MobileMeは発射と同時に墜落した。数週間後、Steve Jobs氏の「社内」メモが外部に流出した。その電子メールには、遅きに失した自明のこと、つまり、プロジェクトを延期するか、少なくとも段階的に開始すべきだったと記されていた。そして当然のことながら、新しい責任者にEddy Cue氏が指名された。Cue氏は引き続き、「iTunes」システムの運営にも携わる。寛大なことに、更迭されたMobileMeの責任者の名前は公表されていない。この前責任者は部下から正しい情報を伝えられていなかったのかもしれないし、適切なタイミングで適切な質問をしていなかったのかもしれないが、そんなことはもはや問題ではない。
しかし、これでは何が悪かったのか、どの液体窒素タンクから漏れが発生していたのかはわからない。そこで、さらに2つの問題、すなわち同期と規模について見てみよう。ここでいう同期とは、複数のデバイスで情報を同じ一貫した状態に維持することを意味する。もっと具体的に言うと、たとえば、電話とコンピュータを持っていて、両方の連絡先を同じ、あるいは少なくとも一貫した状態に維持したい場合だ。簡単な携帯電話では、ケーブル(またはBluetoothによるワイヤレス接続)とソフトウェアを使って、コンピュータの連絡先(の一部)を携帯電話にコピーする。しかし、ちょっと待ってほしい。コンピュータにない電話番号が携帯電話に登録されていて、コンピュータから連絡先をコピーした後もこれらの新しい電話番号も維持したい場合、どうするのか。携帯電話をコンピュータにつないでプログラムを実行するだけでも大変だというのに、さらに困ったことになる。ソフトウェアが、携帯電話とコンピュータの2つの連絡先を比較して、どれを維持し、どれを変更するか、両方のデバイスで決定できればいい。しかし、同名の人物がいる場合や、同一人物の自宅の番号が複数ある場合はどうなるのか。できれば、プログラムがこれらの「例外」を提起し、人間が解決できるようにしてほしい。
これはほんの序の口だ。今度は、もっと現実的な状況を想定しよう。あるコンサルタントが、メール、連絡先、カレンダーを保存したノートPCとスマートフォンを持って出張し、アシスタントがオフィスでデスクトップPCを使っているとする。このアシスタントは「Microsoft Exchange」の用語でいう「代理人」であり、変更、新規項目を含む、出張中のコンサルタントのデータへのアクセス権限を持つ。すべてのデータが同じ一貫した状態に同期されなければならない。一体どのように行われるのだろうか。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
地味ながら負荷の高い議事録作成作業に衝撃
使って納得「自動議事録作成マシン」の実力
「もったいない」という気持ちを原動力に
地場企業とともに拓く食の未来
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」