Exchangeサーバを例に取ると、Exchangeサーバは「真の」データを維持する。そして、スマートフォン、ノートPC、アシスタントのPCといった「クライアント」は、変更、新規メール、更新された予定、新たな連絡先をExchangeサーバに送信する。同様に、サーバは各クライアントに変更を配信する。スマートフォン、ノートPCから新規メール、新規の予定がサーバに「プッシュ」されるのと同様に、アップデートがスマートフォン、ノートPCに「プッシュ」される。コンサルタントとアシスタントが同じアポイントの予定を変更したり、住所を更新したりするなど、競合する状況を容易に想像できるが、現在、少なくともExchangeでは、これらの「例外」はきちんと理解され、ほとんどの場合、きちんと処理されている。しかし、実現には何年もかかった。それは、Research In Motion(RIM、1984年設立)で「BlackBerry」(1999年発売)の開発者が最も売れている同期スマートフォンを洗練させるのに何年もかかったのと同じだ。細かいこと、わずかなミス、特殊なケースが見つかるたびに修正された。BlackBerryは、このエッセーの最初に触れたシンプルで簡単で表面に出ないという命題を達成することで、トップに上り詰めた。
MobileMeは、Exchangeサーバを持たない人たちに、これと同様の表面に出ないレベルの同期を実現することを目指している。「残されたわれわれにとってのExchange」というスローガンがそれを物語っている。しかし、開始時の度重なる障害を見ると、屈辱に思いつつも、BlackBerryとExchangeアカウントを実際に使ってみたApple社員が一体どのくらいいたのだろうかと思う。そうしていれば、開始前にもう少し冷静になったか、全体を延期したか、豪語を控えたことだろう。MobileMeの最初の障害の直後、Appleは賢明にも公にMobileMeの同期に「プッシュ」という言葉を使うのをやめ、「残されたわれわれにとってのExchange」という標語をAppleのウェブサイトから消した。
話を規模に移そう。量が増えると、本質が明らかになる。ある時点で(多くの場合、どの時点かは謎だが)、同じものが増えると、違うものになる。1台のサーバも10台のサーバも大差はない。しかし、1000台のサーバや、Googleのような100万台のサーバの運営になると、別物になる。この規模では、社内の電子メールサーバを運営するのに必要な知識、意欲とは異なる知識、意欲を持つ人たちが必要だ。すべての「iPhone」ユーザーがWindows PCまたはMacを新たに購入したiPhone(あるいは、2.0ソフトウェアアップデートを適用したiPhone)と同期化したいと思った場合、MobileMeの会員数はすぐに数百万人に達し、そう遠くない未来に数千万台のiPhoneを同期化することになる。同期の知識の有無はさておき、MobileMeチームには、「規模」の問題に関する経験、知識、認識があったのだろうか。IT業界には、「規模」の問題に関する経験、知識、認識を持つ人はほとんどいない。Googleの競合会社に、後発にもかかわらず「規模」の問題をよりうまく処理できる企業に惨敗した理由を尋ねてみるといい(カリフォルニア大学バークレー校が発表した論文では、民間企業の助成金によって超大規模コンピューティングが積極的に研究されている)。余談だが、年会費100ドルのMobileMeの会員数が1000万人ということは、10億ドルの収入があるということであり、苦労も報われるというものだ。
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