ウィルコムは上り20Mbpsの通信が可能な次世代PHS「WILLCOM CORE」の商用化に合わせて、全国16万カ所ある基地局の一部に定点カメラやセンサーなどを設置することを決めた。撮影した映像や取得したデータを、防犯やカーナビゲーションシステム、災害時の状況把握などに役立てる。技術課題や法制度への対応などについては、7月28日に設立した「BWA ユビキタスネットワーク研究会」において関係企業や学者、弁護士などと話し合う。2009年後半の試験運用開始を目指す。
ウィルコムはWILLCOM COREを2009年春から東京の一部地域で開始し、2009年秋に全国展開する計画。既存の基地局をWILLCOM CORE対応にする工事の際に、定点カメラなどを設置し、全国にカメラネットワークを構築する考えだ。
「従来の半額程度の費用でカメラネットワークが構築できる。これまで採算面で難しかったようなサービスも可能になる」(ウィルコム代表取締役社長の喜久川政樹氏)
ウィルコムでは、WILLCOM COREの通信料収入に加えて、撮影した映像や取得したセンサーデータを活用した新たなビジネス展開からの収益を見込んでいる。
BWA ユビキタスネットワーク研究会では、カメラネットワークを運用する上で必要となるデータ共有のための標準形式や、カメラなどを設置運用する際のルール、プライバシーの問題への対応について話し合う。会長には京都大学学術情報メディアセンター長の美濃導彦氏が就任し、ウィルコムのほか京セラやシャープ、NTTコミュニケーションズ、日本無線らが理事として参加する。現在のところ、2つの自治体を含む25の企業や団体が参加しているとのことだ。
「インターネットのように、カメラ映像やセンサーデータを社会全体が利用できるように発展させたい」と美濃氏は意気込む。
ただし、実際の運用には課題も多い。BWA ユビキタスネットワーク研究会に参加する牧野総合法律事務所代表の牧野二郎氏は「どのようなビジネスやサービスが生まれ、利用者がどう使えるかという具体的イメージを持つべき。利用のためのガイドラインが必要で、情報発信側が主体的に関われるようにする必要がある」と指摘。とくにプライバシーの問題や、膨大な情報をどう活用していくかという点について、研究会で深い議論が必要との見方を示した。
ほかの通信会社との連携については、「カメラネットワークの実現や発展に必要であれば、研究会への参加要請にも応じる」(ウィルコム喜久川氏)と慎重な考え。将来的には研究会をコンソーシアムに格上げし、カメラネットワークを運用する際のルールや関連機器の標準規格の策定などしていきたいとのことだ。
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