「これまでのマーケティングはすべて米国発だった。大量生産、大量流通、テレビなどのマスコミュニケーションなどだ。しかし21世紀のマーケティングの教科書には、モバイルを使った日本の方法が載ることになるだろう」――ディーツー コミュニケーションズ代表取締役社長の藤田明久氏は6月17日、東京都内で開催されたインターネットマーケティングに関するイベント「ネットマーケティングフォーラム」において、モバイルマーケティングの可能性について熱弁をふるった。
藤田氏によると、モバイルマーケティングの優位点は3つ。(1)生活者への情報伝達速度が速いこと、(2)生活者を巻き込みやすいこと、(3)ごみを出さない販売促進ができることだ。
まず情報伝達速度については、携帯電話は常に持ち歩かれるツールのため、いつでも利用者に情報を伝えられるとする。藤田氏は例として、6月8日に秋葉原で起きた無差別殺人事件を挙げ、「この事件を一番最初に知ったのは、時事通信社が携帯電話向けに配信するニュースを通じてだった。その後、ワンセグでテレビのニュースを見て状況を知り、家に帰ってからテレビをつけた」(藤田氏)と当日の自身の行動を振り返った。
マーケティングの事例としては、コスモスイニシア(旧リクルートコスモス)とさくらやがそれぞれ行った、ドコモの「メッセージF」というモバイルメッセージ配信システムを活用したキャンペーンが挙げられるという。コスモスイニシアの場合、大規模開発マンションについての告知をメッセージFでした結果、7人に1人がモバイル広告を通じて最初に同社のマンションを知ったという。また、コスモスイニシアの場合は2.5人に1人が、さくらやの場合は2.3人に1人がモバイル広告をきっかけとして折り込みチラシを見たとの調査結果が出た。
このことから藤田氏は、モバイルは第一認知媒体となるメディアであると述べる。さらに、これまではテレビCMを最初に見て、ネットで詳細を調べるという行動パターンが想定されていたが、逆にモバイルで見た後にテレビCMや折り込みチラシなどでさらなる情報を得ることがあると指摘した。
2つめの生活者を巻き込む手法としては、ロッテのお菓子「コアラのマーチ」やダノンジャパンの「プチダノン」などの事例を挙げた。コアラのマーチの場合、200種類あるコアラの表情を携帯電話で撮影して送信すると、性格判断などの占いができるキャンペーンを行った。これが面白いと若者の間で評判になり、落ち込んでいた販売数が上昇傾向に転じたという。「購入者はキャンペーンで何かをもらえるわけではないにもかかわらず、販売につながっている点が重要だ」と高い効果があったことを藤田氏は強調した。
また、プチダノンでは、購入者が自分の子どもの写真と名前を携帯電話から送信すると、抽選でその子どもの名前を持ち、顔も似た主人公が登場する絵本が当たるというキャンペーンを実施したという。「子どもの成長を願うブランド、というメッセージを伝えた」とし、その際、手軽に写真を撮って送信できる携帯電話が活躍したとした。
3つめのごみを出さない販促方法という事例としては、ヤッターマンとディー・エヌ・エーのモバゲータウンがコラボレーションしたキャンペーンを挙げた。セブンイレブンのパンを購入するとモバゲータウン内で使えるヤッターマンのアバターアイテム20種類のいずれかがもらえるという企画だ。20種類すべて集めようという利用者が積極的に参加した。
「若い人は環境問題や社会貢献に対する意識が高い。おまけは飽きてしまえば捨てられてゴミになってしまう。企業は購入者が喜ぶだろうと思っておまけをつけても、はたしてそれが、今の世の中に合っているのだろうか。デジタルコンテンツであれば、利用者が飽きてもゴミは出ない。これこそが21世紀の常識ではないか」(藤田氏)
ケータイ白書2008によれば、2009年3月にパケット定額制加入者は5000万人を超え、3.5世代携帯電話と呼ばれる、1Mbps超の高速通信が可能な端末も3500万台を超えるという。藤田氏は「モバイルはPCの小さい版ではない」と訴え、モバイルならではの特性を生かしたマーケティング活動をしていくべきと訴えた。
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