携帯電話キャリアの契約数シェアは、モバイルサイトへのアクセス量における各キャリアのシェアと必ずしも一致しない。携帯電話を保有しているユーザーが必ずしも携帯電話でインターネットを利用するわけではないからだ。
では、いったいどれくらいの差があるのか。企業のモバイルサイトへのアクセス実勢調査データと携帯電話契約数(以下、契約数とする)データを比較してみよう。
ビートレンドの携帯電話向けASPサービス群「BeMss」を利用している約800社のモバイルサイトのアクセス実績を利用し、2007年4月1日から2008年3月31日までのDoCoMo、au、SoftBankのアクセスシェアと、電気通信事業者協会(TCA)が発表した契約数シェアを比べたところ、DoCoMo、auは契約数シェアよりもアクセスシェアが大きく、逆に、SoftBankは契約数に比べアクセス量が顕著に少ないことが分かった。
その差は月によって異なるが、DoComoは4〜7ポイント、auは1〜4ポイント、アクセスシェアが大きくなっているのに対し、SoftBankは8〜10ポイント、契約者シェアのほうが大きい。ここに、キャリアごとのユーザー特性が見て取れる。
1999年2月にスタートしたiモードは携帯電話におけるインターネットサービスのパイオニアであり、DoCoMoユーザーのモバイルインターネット利用環境は整えられている。公式サイトや着メロなどのコンテンツも他キャリアに比べ格段に多い時期が続いた。このため、携帯電話でインターネットをすることに慣れているユーザーが多いと言える。
auもまた、ECサイト「auショッピングモール」や音楽サービスの「LISMO」など独自のコンテンツやサービスがユーザーの支持を得ており、やはりモバイルインターネットを使うことに慣れているユーザーが多いと言えるだろう。
一方SoftBankは、他キャリアに比べ公式サイトが少ない。ボーダフォン時代に多く作られた、海外を意識した端末の技術仕様が国内のモデルと異なるため、それに合わせた一般サイトの作成が難しかった。ソフトバンクモバイルになってから状況は大きく変化しているが、同社は「通話料金が安い」というイメージを積極的に打ち出しており、インターネットサービスよりも通話やメールを前面に出す戦略をとっている。それゆえに、現在は他キャリアに比べ、通話メインのユーザーの割合が多いと考えられる。
しかしながら、興味深いのはSoftBankがアクセスシェアを急速に拡大させていることである。いくつかの要因が考えられるが、大きな環境変化として、パケット定額制の普及と、一般サイトが主流になったことは大きい。また、表現豊かなHTMLメールやFlashコンテンツ、チラシに取って代わりつつある携帯電話向けクーポンの存在は、携帯電話でインターネットを利用することの魅力を一般ユーザーに伝えている。
もうひとつ、ソフトバンクの公式ポータルサイトである「Yahoo!ケータイ」の存在も大きい。PCで慣れ親しんだYahoo! JAPANが携帯電話でも利用でき、コンテンツのみならず、PCのフリーメールが携帯電話で閲覧できるなど、ユーザーがメリットを感じやすい要素が多くある。通話メインであったユーザーが、「PCでできることが携帯電話でもできる」と体験し、携帯電話でインターネットを利用するようになってきていると考えられる。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス