モバイル向けのテキスト広告を配信できるアドマーケットプレイスを運営する米Admob。広告主が広告の内容や種類、配信先の地域やモバイルキャリアなどのカテゴリと、広告の入札価格を設定すれば、自動的にパブリッシャーサイトで広告が配信される。2008年初頭に日本参入を果たした同社は、4月よりその事業を本格展開させている。
今後の日本市場での展開について、Admobバイスプレジデントで事業開発を担当するNiren Hiro氏に聞いた。
すでに2008年1月からテスト的にサービスを開始しており、最適化やインターフェースについての確認をしつつ、4月から本格的に活動を開始しました。今では国内に数百のパブリッシャーがいます。
パブリッシャーのサイトは中小規模が中心です。日本では代理店やメディアレップというエコシステムができあがっていますが、それらに相手にされない中小のサイトが何万サイトもあります。まずはそういったサイトから輪を広げていき、今後は大手サイトも取り込んでいきたいと考えています。
Admobでは2008年3月時点で月間28億インプレッションの広告を配信しています。我々の試算だと、2008年12月には月間80億インプレッション程度になると考えています。今は日本のパブリッシャーと話し合いを進めている最中ですが、年内にも日本で10億インプレッション程度獲得したいと考えています。
また、現在は日本での事業開発を進めています。今後は日本でのオフィスやメンバーについても調整していく予定で、日本法人の設立も検討中です。
米国における広告主は、コンテンツプロバイダー、モバイルメディア、コマース、そしてナショナルブランドが大体4分の1ずつというところです。ナショナルブランドは広告主になるのが遅かったのですが、最終的には全体の4割くらいまでに成長すると見ています。
我々は広告最適化のために携帯電話のキャリアや端末機種番号などさまざまなパラメーターを取得しています。そこで気付いたのは、日本は「キャリアが端末をコントロールしている」と思っていたものの、そのパラメーターを数多く公開しているため、最適化が非常にやりやすいということです。
国によって異なりますが、特にヨーロッパではキャリアが出力するパラメーターを公開しないようにしているケースもあります。たとえば同じBlackBerryの端末でも、それがVodafoneのものかT-Mobileのものかで公開されているパラメーターが異なるということがありますが、それを読み切らなければ広告を最適化できません。我々は6000以上のキャリアに広告を配信しているので、公開されていないパラメーターを読み切る技術についても開発に注力しています。
またいわゆるCGMコンテンツについてですが、たとえばソーシャルネットワーキングサービス(SNS)であれば、検索ページではユーザーが何か探すという目的があるため広告のクリック率が高い一方、メッセージをやりとりするようなコミュニケーションページではユーザーは広告をクリックしません。しかしながら、現状ではそのようにページの属性による差別化ということがなされていないようです。
我々はeCPM(effective Cost Per Mill:広告1000回表示あたりの収益額)で広告の順位を決めているので、クリックレートが低いところでは広告が入らないほうがいいのですが、その一方で検索ページなどに2枠3枠の広告を入れれば、ユーザーだけでなくパブリッシャーや広告主にも喜ばれますよね。我々の最適化エンジンはそこまで考慮して広告を配信するため、日本市場でのビジネスについても自信を持っています。
代理店は非常に大事な顧客です。昔ならナショナルクライアントしか代理店を使わなかったが、今ではモバイルの大企業も生まれている。そういった企業はやはり代理店が必要であり、代理店を避けることつまりはお客を避けることになってしまうでしょう。
もちろん我々は直販を進めていく。今までメディアレップ、代理店誰も相手にしてくれなかったスモールプレーヤーやロングテールプレーヤーたちが「Adomobで稼げる」となると話に乗ってくるはずです。
我々はワールドワイドで同じサービスを提供するほうが、スケールが大きくなると考えています。ですので、独自サービスでなく、日本で得たノウハウを世界中に展開していくという考えをもっています。
たとえば、日本では絵文字を利用するという文化がありますね。我々も今までテキスト広告のみを配信していたが、今後は絵文字や小さなグラフィックなどにも対応した広告商品をグローバルで提供していく予定です。
商品以外では、ビジネスモデルについても考えていきたいと考えています。日本はCPA(Cost Par Action:成果報酬)の割合が大きい。ですがCPAだと1カ月たってレポートが上がってくるまでその効果が分からない、ということも少なくありません。これはレポートの行程に人間の手入っているからです。そこを自動化できるサービスなども開発しています。
日本のモバイル事業には課金、広告、コマースの3つのモデルがあります。一方海外では課金か広告2つです。携帯電話を持っていって地下鉄の料金を支払うというようなことはありません。海外でコマースといえば、たとえば広告をクリックしたらフリーダイヤルに電話を発信し、クレジットカードを契約する--といったモデルになります。日本ならばそのような手順を踏まなくとも商品の購入などができるので、そのあたりでの連携は考えたいと思っています。
また、ユーザーがどういう性質をもっているのか理解していないと最適な広告を流すことはできません。そのために我々は最適化のためにサーバサイドで情報を取得しています。携帯端末ではクッキーを利用して属性を判断することはできませんが、IPと端末、キャリアで同じユーザーだということがわかってきます。
たとえばSNSであれば、それに加えて年齢や性別といった情報がわかるので、そういった情報についてもサーバに登録できるようAPIを公開しています。それに今度は位置情報も追加する予定です。位置情報の形式は国によっても異なりますが、日本に対応させていくつもりです。そうすることで、キャリアだけでなくユーザーの地域を絞った広告配信なども実現できると考えています。
iPhoneではリッチな広告を流せるために広告の効果が高くなっています。仕組みとしては日本でも提供できるのですが、まずは現在のビジネスに集中していき、その後展開していきたい。広告主にプッシュしても、ユーザーが居ないのであれば意味がないでしょう。
個人的な意見になりますが、最適化やアルゴリズムはモバイルとPCと全然違うものです。そういう意味ではどこもモバイル向けに作り直す必要があるためうまくいくかわからない。モバイルにはモバイルなりの最適化が重要でしょう。
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