情報通信政策について議論と提言を行う民間団体、情報通信政策フォーラム(ICPF)が12月4日にシンポジウム「2.5GHz帯をどうする」を開催。ソフトバンクモバイルの取締役副社長の松本徹三氏が「無線ブロードバンドの未来」と題して講演した。
2.5GHz帯の事業者免許の2枠をめぐっては、現在ソフトバンク陣営のオープンワイヤレスネットワークをはじめ、4社が名乗りを上げている。総務省では、各社から提出された事業計画書に基づき比較審査を行い、12月12日にも認定事業者を決定する見込みだ。11月22日には申請中の4社による公開カンファレンスが総務省主催で行われるなど、2.5GHz帯をめぐる業界の熱の高まりは、まさに今最高潮に達している。というのも、これまでの周波数配分が政府による一本化調整で行われてきたのに対して、今回は申請事業者間の比較審査という、日本では初めての方式が採用されているからだ。
業界の一部では今回の審査を「美人コンテスト」とも揶揄している。欧米では電波の配分に関してはオークション方式が採用されているのが通例で、恣意性が介入しないオークション方式に対して、「美人コンテストなら公明正大な審査が行われなければならないが、総務省はそれを現実的に行えるのか」と、事業者の中には今回の審査方法を疑問視する声もある。
これに対して「美人コンテストはオークションより優れている」というのがソフトバンクの考え方だ。松本氏は「オークションは落札した会社が市場評価を見誤り、市場全体が不利益を被ることもある。また落札価格は国の財源にはなってもユーザーに還元されるわけでもなく、『IT税』と呼ばれても仕方がない」と説明した。しかし、その一方で「総務省は各社の事業計画をすべて90点以上と評価しているが、1点差で勝負が決まるのなら、その差がどこにあるかをきちんと説明してもらわなければ納得がいかない」と、あくまで公明正大な審査を前提に、今回の審査方式を支持することを強調した。
ソフトバンクは、2.5GHz帯のビジネス戦略に関して、徹底したMVNO中心主義をうたっている。松本氏は「ネットワークは国民に広く開かれた共通の基盤。ビジネスモデルはその上にあるもの。今回の議論の前に、我々は他社に対して事業展開での協調を呼びかけたが、残念なことにそれには応じてもらえなかった」と明かし、「仮に2枠のうち1枠を獲得できたとして、その後でもいつでも他社と一緒に事業を進める準備がある。それも含めて我々がオープンだということを理解してほしい」と語った。
また、WiMAX方式の3社に対して、唯一次世代PHS通信による事業展開を計画しているウィルコムに対して「2枠のうち1枠が次世代PHSということになればWiMAXは事実上1社独占ということになり、競争原理的に公正ではなくなる。PHSの場合、2.5GHzならガードバンド(干渉を避けるために使わずに空けておく周波数幅)が10MHz必要になり、国民の資産である電波の有効利用にならない。次世代PHSならアイピーモバイルが返上した2GHz帯を使うほうが基地局も現在のまま共有できるし、常識的に考えればPHSにとってメリットが大きいのではないか」と提言した。
さらに、WiMAX技術に早くから取り組んでいる点をアピールするKDDI陣営に対しては「我々はユーザーの利益という観点から徹底した技術分析と効果の検証を行った上でよりよい技術を選択するに至ったのであり、早く決めることが必ずしもいいことではない。遅く始めたことが減点になるというのは納得ができない。KDDIが画期的な技術を開発したというのなら、それはむしろ世界中に売っていくことが株主の利益になるはずだ」と指摘。さらに「WiMAXで2社ということになれば、20MHzでも大丈夫と言っているKDDIに20MHzを割り当て、30MHzは我々に配分されるのが妥当だ」と主張し、2.5GHz帯獲得に向けて、ソフトバンク陣営の一歩も譲らない姿勢を示した。
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