ディーツー コミュニケーションズ、mediba、ジャパン・モバイル・コミュニケーションズの3社は11月21日、モバイル広告の市場動向を紹介するセミナー「モバイルアドフォーラム 2008」を開催した。第6回目となる今回は、ユーザーと商品をより高いコミュニケーションで結ぶという「エンゲージメント」がテーマとなった。
「モバイルを活用した顧客との関係構築の有効性」と題して行われたパネルディスカッションでは、ディーツー コミュニケーションズ代表取締役社長の藤田明久氏がモデレーターを務め、ロッテ・アド 制作部 第一担当の千葉秀起氏、本田技研工業 日本営業部 宣伝販促部 営業主幹の渡辺春樹氏、博報堂DY メディアパートナーズ メディア・コンテンツマーケティング局の鈴木雄介氏がパネリストとして、自社事例を紹介しながらモバイル広告の有用性を語った。
博報堂DY メディアパートナーズの鈴木氏は、短期的なマーケティングではなく、中長期的な視野を持つ重要性を指摘した。ブランドを確立し、ユーザーにリーチして動きにつなげるために、エンゲージメントが重要であると話す。
ロッテ・アドの千葉氏は、お菓子「コアラのマーチ」で実際に行ったモバイルキャンペーンを紹介した。
現在、全268種類の絵柄が登場しているコアラのマーチ。ロングセラーとなっている商品だが、その座を維持するためには常にブランドを活性化し、コアラのマーチに対する意識の低い層や新規にアプローチすべき層へのマーケティングが必要となる。すでに10年以上販売を継続しているブランドのため、当初設定したメインターゲット以外への訴求が重要になるのだ。
そこで行ったのが、「コアラのマーチ大好き企画」。コアラのマーチの中の好きなコアラを撮影して送ると、性格判断やラッキーアイテムが返信されるというもの。これにより、ユーザーとブランドとのコミュニケーションを進めようとした。
利用したのは、モバイル向けの写真認識システム「PicLin」。バーコードなどではなくコアラのマーチ自体を撮影するため、パッケージのデザイン性を損うことなくキャンペーンに誘導できる。しかも、携帯電話をよく使う世代に訴求でき、新規ユーザーの開拓にもつながる。
モバイルソーシャルネットワーキングサービス(SNS)大手の「Gocco」と連携し、コアラのマーチのコミュニティを作ることで、口コミによる広がりも期待した。メールにはGoccoのURLを記載。Gocco内のコミュニティで盛り上げるとともに、サイトを訪れた人が知らないコアラの絵柄を見て、再びコアラのマーチを購入するという循環を生んだ。また、個人ブログにも多く書かれ、多くの人に広まった。
時間帯で見ると、通常のモバイルインターネット利用時間のピークは午後9時〜11時ごろなのに対して、キャンペーンページでは正午から午後9時ごろまでピークが続いた。学生を中心としたターゲット層にひったりと合ったキャンペーンが展開できたことを示しているといえる。キャンペーンが好調だったため、当初4月までの実施予定だったのを7月までに延長。受験企画など、季節に合わせた話題づくりをすることで、アクセス数も伸びた。最終的にメール総数は78万9725通、総ユニークユーザー数が50万5666名と大きなキャンペーンになった。
テレビ番組「トレビアの泉」でフランスのパティシエが好きな日本のお菓子の1位として紹介されて好調だった前年と比べても、売上高は前年比1.2%増を記録した。ユーザーと商品をモバイルコミュニケーションで結びつけることができた成功例となった。
本田も、主力車種「Fit」でモバイルキャンペーンを展開。まだパソコン向けには及ばないが、10月22日から28日までのキャンペーン期間中に約14万人を集客するなど、モバイルの可能性に手ごたえを感じているという。パソコン向けサイトでは2005年からアクセスの伸びが止まっているが、モバイルサイトはいまだに伸びているとのこと。本田は、2010年にサイト訪問者数を5000万人とする計画を立てており、それにあわせてモバイルを有効活用していくとのことだ。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」