モバイルコンテンツフォーラムによると2007年度のモバイルゲームの市場規模は848億円と発表されているが、2008年度は新規サイト創設数の増加や大型広告を伴った「診断ゲーム」などの台頭、そしてコアユーザーを対象としたゲームの客単価アップなどを背景に、さらにそれを上回る数値が発表されることだろう。そんなモバイルゲーム市場の中で今一際強い息吹を感じるのがモバイルオンラインゲーム市場である。
PCのオンラインゲーム市場は現在ロールプレイングゲームのタイトルが約50%を占めており、中でも多人数参加型のゲームに人気が集中しているという(2009年2月有限責任中間法人日本オンラインゲーム協会発表)。これを追うように、昨今のモバイルゲーム市場においても多人数同時参加型ロールプレイングゲーム(Massively Multiplayer Online Role-Playing Game以下「MMORPG」)を配信する新規サイトが次々と創設されており、今後のモバイルゲーム市場の新たな柱となる可能性を感じさせている。
モバイルオンラインゲームの魅力とは何であろうか。PC・モバイルを問わず、オンラインゲームの魅力は他者とのコミュニケーションにあると言える。言葉を交わすことはもちろんのこと、好みの姿に着せ替えたキャラクターを見てもらえる、成長した姿を披露できる、1人では決して倒すことのできない強大な敵も、仲間と共に助け合うことで打倒できる。──こうしたすべての時間と体験の共有がスタンドアローン型のゲームにはない要素、すなわち「コミュニケーション」であり、オンラインゲームのキラーコンテンツそのものであると言っても過言ではないだろう。
PC用のグラフィカルで表現力に富んだMMORPG作品を楽しむためには、十分な通信環境と膨大なデータを処理するための高いPCスペックが要求される。それはモバイルであっても同様で、そのようなMMORPGを実現するためには、2009年現在の状況であっても遥かに及ばないのが現状だ。過去の環境であればなおのことである。そのため、これまで各社はゲームシステムや通信方法などを創意工夫しながら、プア環境においても「他のプレーヤーと楽しめる」というMMORPG本来のおもしろさを追及してきた。
古くはブラウザゲーム型の「ネバーワールドオンライン(アンビション)」が真っ先に例として挙げられる。
2004年にスタートした当作品では、通常のロールプレイングゲームのように十字キーでキャラクターを操作してマップを移動することはなく、アドベンチャーゲームのようにコマンド式で場所を移動する。移動した先で、その時間同じタイミングで他のプレーヤーもその場所にいるならば、そのプレーヤーと会話をしたり、戦ったりできるというものだ。
この方式はアプリゲームに比べビジュアル面での表現力は落ちてしまうものの、時間の共有、他者とのコミュニケーションといったMMORPGのおもしろさを十分に実現できており、根強いファンも多く、これまでのプレイ人数は111万人を超えるという(2008年5月同社発表)。なんといっても特筆すべき点はユーザーに要求する環境スペックの低さであり、MMORPGでありながらパケット料金が定額ではなくても、また古い端末であってもプレイ可能だ。このハードルの低さは国境をも超え、2008年5月からは韓国でのサービスもスタートしている。
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