いよいよ商機到来、モバイルMMORPG--2009年度注目のモバイルコンテンツ市場 - (page 3)

?瀬一樹(ドコモ・ドットコム コンサルティング部チーフ)2009年06月04日 12時23分

2009年、成功するモバイルMMORPGは?

 イルーナ戦記の人気の秘訣はPCオンラインゲームの王道中の王道を、他に先駆けてモバイルで体現したことにある。その先行者メリットは非常に大きく、他社が同様の「MMO王道作品」を作り上げたところで、すでにイルーナ戦記内に共に戦える友達がおり、時間をかけて育成した自分の分身であるキャラクターに愛着を感じている既存ユーザーを、他の作品に乗り換えさせるのはかなりハードルが高く、現在はメニューリストランキングからもイルーナ戦記の独走状態が窺える。では今後モバイルMMORPG市場においてどこに勝機があるのであろうか。考えられるパターンとして以下を挙げたいと思う。

・「3キャリアに対応している」

 イルーナ戦記はドコモ専用のサービスである。しかしコミュニケーションこそがMMORPGのおもしろさの元であるとするならば、リアルでの仲間内全員で参加したいと思うのが常だろう。

「エレメンタルナイツオンライン」 初のNTTドコモ、auに対応した3DMMORPG「エレメンタルナイツオンライン」。6月にはソフトバンクモバイルにも対応予定

 5月現在、i-menuランキングで19位に位置している「エレメンタルナイツオンライン(ウインライト)」は初のドコモ、auに対応した3DMMORPG。6月にはソフトバンクモバイルにも対応予定となっており、ついに3キャリア対応が実現する。ウインライト社は「雀ナビ四人麻雀オンライン」において、同時接続8000人以上のリアルタイム対戦を4キャリア+PCで既に実現しておりネットワーク技術の高さに定評がある。「みんなでできる」は、当たり前のように思えるが、運営側からすれば高い障壁だ。このハードルを乗り越えることができる作品は、多くの競合サイトに対して優位性を得ることができるだろう。

・「著名作品である」

 著名作品とは、コンシューマーゲームやマンガ、アニメなど他のメディアで成功した作品を原作として取り扱う作品のこと。スタンドアローン型のゲームでは枚挙に暇がないが、モバイルMMORPGとしては逆にまだほとんど例がなく、「メガテンオンライン(BBMF)」内の「ペルソナモバイルオンライン」が、コンシューマーゲームのヒット作「ペルソナシリーズ」をモチーフとした作品として3月にスタートしたばかりである。現在のコンシューマーゲーム市場には、かつてのヒット作の続編が多くリリースされており1つの成功の方程式となっているが、その計算式はモバイルMMORPG市場においても当てはまるはずだ。

・「PC、コンシューマー作品と連動している」

 PCのMMORPGのファンは多く、その熱中ぶりは時に「ネトゲ廃人」を生み出すほどだ。そんなファンも学校や会社など、やむなくPCの前から離れ「リアルにログイン」しなくてはならない時があるだろう。そんな時に、モバイルはきっと役に立つはずだ。あちらの世界にアクセスし、仲間とのコミュニケーションが図れる、少しでもお金や経験値を稼ぐことができる、そういったサービスには高い需要があるように思われる。もちろんモバイルでPC版MMORPGの世界を、PC同様に闊歩できるのであればそれは現存するモバイルMMORPGにはまだない新たな、そして強力な強みとなるだろう。

・「コアユーザーを対象にして棲み分ける」

「双剣舞曲オンライン」 プレーヤーの力量、技量が問われるPvP(対人戦闘)ゲーム「双剣舞曲オンライン」

 多くのMMORPGがレベルアップやアイテム購入などの自分のキャラクターを成長させることに目的が集約されているのに対し、「双剣舞曲オンライン(ドワンゴ)」が売りとしているのはプレーヤーの力量、技量が問われるPvP(対人戦闘)だ。2チームに分かれて繰り広げられる頭脳戦は、時間をかけただけでも、お金をかけただけでも勝てるものではなく、ワンパターンな「狩りゲー」では味わえないおもしろさが味わえる。ゲーム内に登場するさまざまなデータやシステムを理解するにはかなりゲーム慣れしていることが前提となるため、ライトユーザーには難易度が高いと思われる。しかし、そのハードルを越えると、ゲームとして大切なカタルシスがふんだんに味わえるのだ。

・「システムは王道、驚くほど美麗」

 PCのオンラインゲーム同様に、高精細な世界観の演出はMMORPGの醍醐味の1つである。そのため、ゲームシステムが同じであったとしても、既存のメジャー作品を遥かに超える美しさを持つ作品の登場は、新たなトレンドを生み出す可能性がある。とはいえ、それが実現するためには高性能な描画エンジンの登場と、高スペック端末の普及が必須となるが、端末販売数の低下により新端末の普及には今まで以上に時間を要する。そのため、このパターンが近々に実現する可能性は低く、あくまでも「次世代ゲーム」として期待される未来の1つとなるだろう。

 「イルーナ」を皮切りに、今まさに勃興しつつあるモバイルMMORPG市場。2008年を黎明期とするならば、2009年はその普及期・成長期となるだろう。開発・運用コストの高さや必要とされる技術力の高さなど、参入障壁は他のジャンルと比べ格段に高いが、月額300円以上の高い客単価が期待できる新しい市場でもある。TCP/IP通信(ドコモで言う「iアプリオンライン」)対応端末の普及はまだまだこれからなだけに、環境が整った後に、どのような新サービスが登場するのか大いに注目したいところだ。

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