子供とケータイについて考える〜授業にケータイを活用した取組み〜

戸口功一(株式会社メディア開発綜研)2009年11月04日 17時38分

 本コラムでは、子供にケータイは必要か、といったテーマを何度か扱ってきました。石川県の「いしかわ子ども総合条例」改正案は、2010年1月に施行されます。この条例は「小中学生に対して防災、防犯など特別な場合を除いて携帯電話を持たせないよう努める」という努力規定です。他の自治体も追随するのではないかと話題になっています。

 本コラムでも「携帯三原則」と比喩しましたが、世界中がネットワーク社会になる中、ケータイを規制の枠組みに入れることが未来につながるのかどうか、賛否が分かれるところです。

 ここでひとつ興味深い取り組みがニュースになりました。リクルート社から東京都杉並区和田中学の校長に就任(東京都初の民間人校長)し、現場から学校改革を実施した藤原和博氏が、現在橋下大阪府知事から教育分野の特別顧問を委託され、大阪の小中高の活性化を託されているそうです。その取組みの一つが、高校生を対象にした「ケータイをバリバリに使った授業」です。

 高校生は、ほぼ100%がケータイを持っているので、それを規制しても仕方がない、授業で使ってしまおう、というのがコンセプトです。ケータイでメールを打つことが当然となっている高校生にその特技を活かして、授業の回答、意見をケータイメールで先生へ送信し、その意見を反映した授業を行うという、まさにリアルタイムeラーニングです(先生側は情報を収集する特別なアプリケーションをPCにインストールしています)。

 驚いたことに生徒は400字くらいの課題を出しても、ケータイメールを使って7〜8分で送信してきたそうです。そして挙手の授業よりも活発に意見を得られることで、先生も偏らない本当の意味での双方向授業が可能になるのではないかと期待されています(先生側にリテラシーがなければ成立しませんが‥)。

 学校にケータイを持ち込むことへの嫌悪感はなかなか拭えませんが、これからのネットワーク社会における授業の一端を垣間見たニュースではなかったかと思います。確か橋下府知事はケータイ規制論者ではなかったのではないでしょうか‥。

 このようにケータイは大人が当たり前のように所有し、子供たちは生まれた時から身近にあり、大人が考えるよりも遥かに使いこなしています。今の日本のケータイはフィルタリングがあり、ある程度キャリアの管理下で子供を守ることが可能です。

 しかし今後、ケータイ以外にネットワークに通じる端末は莫大に増えます。携帯ゲームを筆頭に、音楽再生機、電子辞書、キンドルのような電子教科書も登場するかもしれません。その時代を見据えたネットワーク社会のルールを作成していかなければならないでしょう。私個人としては今のネットワーク環境下で最もマナー違反をしているのは大人のほうだと思います。そんな大人が子供たちに何を教えればいいので しょうか。

 その一つの例として魔法のiらんど社の取組みが参考になるかと思います。 魔法のiらんど社はケータイ小説で有名です。コミュニティ会員の中心は中高生 だそうです。そのコミュニティでアイポリスという監視業務を行っています。アイポリスは子供たちのネットワーク上での先生的役割を担っています。この世代の子供は、まだ先生の言うことはきくそうです。アイポリスはネットコミュニティの先生として子供たちに秩序を指導しているのです。怒られながら子供たちは学習していくとのことです。

 ネットのいじめはケータイだけの問題ではないと思います。未来の子供の環境を考えれば、おのずと方向性は見えてくると思います。ケータイはタバコやお酒と同じでしょうか。規制すれば今、被害にあっている人は救えるのでしょうか。様々な意見はあると思います。皆さんはどうお考えでしょうか。

◇ライタプロフィール
 戸口功一(とぐち こういち)
 1992年(株)メディア開発綜研の前身、菊地事務所(メディア開発・綜研)にてスタッフとして参加。2000年法人化で主任研究員、2005年より現職。1992年電通総研「情報メディア白書」の編集に参加。現在も執筆編集に携わる。その他、インプレス「ケータイ白書」、「ネット広告白書」、新映像産業推進センター(現デジタルコンテンツ協会)「新映像産業白書」、「マルチメディア白書」、「デジタルコンテンツ白書」の執筆および経済産業省、総務省の報告書等を多数手掛ける。

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