動画コミュニケーションサイト「ニコニコ動画」を運営するニワンゴは8月、ユーザーが動画作成に必要な素材を投稿し、共有できるサービス「ニコニ・コモンズ」を開始した。ユーザーは自分の描いたイラストや楽曲、動画などをサイトに投稿でき、ほかのユーザーはその素材を使って動画などを作成できるようになっている。
現在は個人間での利用のみだが、将来的には法人からも素材の委託を受け、動画素材として販売していく考えだ。第一弾として、エイベックスが大型新人として売り出しているアーティスト「GIRL NEXT DOOR」がニコニ・コモンズ上で公式映像素材を提供し、ユーザーにミュージックビデオを作ってもらう試みを始めている。
自分の作品を公開し、他の人がその作品を利用できるように宣言する方法としては、クリエイティブ・コモンズが有名だ。ニコニ・コモンズはどのような考えの下で生まれたのか。ニコニ・コモンズを企画、開発したドワンゴ執行役員プロデューサーの伊織巧人氏、同ニコニコ事業本部事業推進部第二セクション第一Gグループリーダーの大橋健太郎氏、ニワンゴ取締役の木野瀬友人氏に聞いた。なお、伊織氏はニコニ・コモンズの運営事務局長を務めている。
木野瀬:昨年の秋ごろからですね。(ニコニコ動画向けの動画投稿サイトである)「SMILEVIDEO」に投稿される動画の著作権に問題があると議論されていたのですが、ユーザーのオリジナル作品もずいぶん存在していましたので、それが問題ないことを証明するシステムが欲しかったんです。
ただ、それを実際にどうやって実現したらいいのかというのをずっと議論してきて、ようやく7月に開催した「ニコニコ大会議」(※ユーザーが参加したニコニコ動画の新サービス発表会)で発表できるようになったという流れです。
伊織:やはり、日本人、しかもニコニコの文化に近いユーザーに使ってもらうというところでまず考えたのが、素材作品そのものを1つのサーバで管理するほうがなじみがいいのではないかということです。
「特定のマークが付いている素材を(ネット上の)どこかで探してください」というのは自由度が高いんですが、日本人向けにはどちらかというと、公式サービスがあって、そこにいけばとりあえず素材がきちんと用意されているという安心感があったほうがいいと思うんですよ。
将来的にもずっとこの方法でいくかというのは社内でも結論が出ていないのですが、当面は私たちのほうで場所を用意して、そこに素材作品を登録してもらい、そこさえ見ていればすべての素材作品をウォッチできるという環境を作りたいと思っています。閉鎖的と言われてしまえばそれまでなんですが、とりあえずそのほうが使い勝手がいいのかなと思っていますね。
もう1つの特徴は、利用条件が後で変えられるという点です。これは今までなかったことだと思います。
ライセンスは、「この条件でライセンスします。これはもうずっと変わりませんよ」というのが原則的な考え方だと思うんですが、「こういう範囲で使ってください」というところで表現しきれる範囲というのがなかなか難しいと思うんですね。例えば、「公序良俗に反しない形で使ってください」といっても、公序良俗に反するかどうかという範囲は人によって全然違う。
また、「自由に使ってもらってかまわない」と思って公開してみても、意図しないような使われ方をされてしまって困るということは、どうしても出てきます。そうした場合に、「一度ライセンスしたのだから、未来永劫そのライセンスを変えてはいけない」と言われてしまうと、なかなか試してみるのが難しくなる。そこで、公開後にライセンス条件を変更してもいいというコンセプトにしました。
伊織:利用条件の変更履歴はすべてサーバで管理しており、その履歴はユーザーも見られるようになっています。ですから、どの時点で利用条件が変わったかが分かるようになっていますし、素材作品をダウンロードした人には、その利用条件が変わったことを通知します。ユーザーにはそれらを見て、発表する場を変えるなどの対応をしてもらうことになります。
大橋:ニコニ・コモンズの中にメッセージボックスがありますので、そこに通知が行きます。また、オレンジ色のヘッダーの部分に「新着情報があります」というアラートが表示されます。
伊織:基本ルールとして、自分の作品をアップロードする際に、素材作品の規約が更新されていないかどうかを確認していただきたいと思っています。
伊織:そこまでの連携はまだありません。ただ将来的には、希望ユーザーにはメールで通知するといったこともありうると思っています。できるだけ利用条件が変更されたことをユーザーが気づきやすいようにはしたいですね。
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