テレビとネットの比較という意味では、30歳代以下の若い人たちの数字を見る限り、既にテレビがメインでインターネットがサブではなく、インターネットがメインでテレビがサブになっているという逆転現象が起きています。ただし、56.comはYouTubeなどとは違って、中国の事情を考えると、テレビと協力できる関係にあります。ちょっとその背景を説明させてください。
1つは、米国ではテレビもネットも普及率が非常に高いということがあります。両方とも飽和している市場だと思いますが、中国でテレビはほぼ100%の普及率を達成していますが、インターネットの普及率はまだ18%ぐらいです。ただ、この18%はこの数年で30%に伸びていく成長段階にある産業です。
こういった背景の中で、サイトを見ている若いユーザーのほとんどはテレビをあまり見ません。ネットでビデオを見ています。そうなってくると、テレビ局にとってネットはライバルではなく、今リーチできていない新しい若い世代にリーチできるという新しい市場開拓になるわけです。そのため、56.comからしてもテレビ局はライバルというよりも、何か一緒に組めるパートナーという位置づけになっています。
実際に、今中国では著作権の問題があって、DVDなどのコンテンツではお金を儲けられない中で、新しいチャンネルとしてネットとの協業モデルが確立できれば、こうしたビジネスに一気に流れてくる可能性があります。例として、中国でエンターテインメント番組に強いと言われる国営ネットワークの湖南省のテレビ局が、56.comとパートナーシップを組んで一緒にタイアップしています。
つまり、YouTubeがなかなかできなかったテレビ局とのタイアップを既に実現しています。米国だと利害関係があまりにも相反していて無理だったと思いますが、中国では逆にそうでない部分が大きいので、一緒に組むという選択肢が生まれてきました。
あと、おそらく中国の特徴としておもしろいのは、ずっと一人っ子政策をやってきたので、家庭では一人っ子が多いのです。そういう人たちは、ただ単にネットのメディアに接しているだけではなく、コミュニティーなどを通じてほかの人とのインタラクションを非常に求めています。そういう中で、やはりネットのメディアは非常にソーシャルでなければいけないと思っています。中国で成功しているネットのサービスを考えてみると、インスタントメッセンジャーだったり、百度が提供している普通の検索よりももっとエンターテインメントに関連した検索だったり、ソーシャル性を持ったところが、中国のメディアの中でも重要視されているのではないでしょうか。
このテレビ局は今までネットの企業と組むときには、必ずそのネット企業が大きなコミュニティーを持っているか、大きなことをやるための技術的なインフラを持っているかを非常に重視してきました。彼らが今実際に56.com以外に協業している企業は、先ほど言いましたQQや百度なのです。
ビデオの分野でなぜ56.comを選んだかというと、やはりこのサイトが非常に大きなコミュニティーだということです。もう1つは、その大きなコミュニティーに対して映像を配信するためのインフラを有していると言うことです。実際に何をしているかというと、湖南テレビは彼らのメインのコンテンツ以外にも、ほぼあらゆる番組を56.comのサイトに提供をし始めています。
それはなぜかというと、そうすることによって、彼らがテレビだけではリーチできていないオーディエンス、今成長率が一番高い若いオーディエンスに対してコンテンツを提供することができるからです。そして、収益面としてはレベニューシェアという形で、新しい広告モデルを考えています。
その広告モデルの1つは、既存のテレビで販売しているコマーシャル枠をネットに広げるということです。それからネットだからできるという新しい広告のモデル、これはまだ模索中ですが、そういったものをやることによって、お互いにこの既存のコンテンツを新しいオーディエンスに持っていくことによって、新しい商域を作る。そういうモデルを一緒に考えています。
また、中国にはいろいろなテレビ局がありますが、その中で湖南テレビというのは一番エンタメに強くてリーダー的な存在ですので、この事例があることによって、今いろいろなテレビ局から同じような問い合わせが来ています。
まず1つ目ですが、中国にはSARFT(the State Administration of Radio, Film, and Television)と言って、テレビやラジオを統括する政府機関があります。あと、インターネットに関しては中国情報産業部(MII)といって、やはりネット業界を管轄する政府機関がありますが、こういった機関は2007年の年末までの間は、特にこのオンラインビデオに関しては何も規制に関するポリシーを持たず、活動してなかった状況でした。
この分野がここ数年で急速に伸びてきたことによって、何らかの形で、政府もこれに対する規則を築かなければならないという動きが出てきたのだと思います。それに対して、56.comはそれほどネガティブだと思ってなくて、やはりこれだけ大きくなってきた産業なので、自然な流れだろうと考えています。
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