知る人ぞ知る存在だった「コンテンツデリバリーネットワーク」(CDN)という技術が活躍の場を広げている。CDNとは、オンラインで展開される動画や音楽、ゲームなどのエンターテイメントコンテンツやリッチなネット広告を、PCの前のエンドユーザーにストレスなく確実に届けるためのものだ。
例えば、自社サイトにヤフーやMSNなどの大手ポータルからリンクが貼られたとする。この瞬間、大量のトラフィックが生まれるが、これに耐えられるネットワークを維持し続けるのは、一企業にとっては非常に困難で、投資効率も悪い。だからといって、サイトのコンテンツが閲覧不可となる状況は避けなければならない。インターネットコンテンツであろうと、ユーザーにとっては立派な放送事故となってしまう。
そこで、エンドユーザーからの同時リクエストや、大手ポータルなどからの瞬間的なトラフィックスパイクを、大規模なサーバとネットワーク帯域で支援するサービスが必要となってきた。これがCDNという事業だ。
動画をはじめとしたリッチメディアが伸長するなか、2007年4月には、グローバルでCDNを展開する米国Limelight Networksが100%出資の日本法人ライムライト・ネットワークス・ジャパンを設立した。当然ながら日本はブロードバンド大国であるため、CDNのニーズが非常に高かったという。CDNの市場性、今後の戦略について、同社代表取締役社長の塚本信二氏に話を聞いた。
私は15年間オンラインメディアに関わってきましたが、ここ数年で視聴者主導型の試聴スタイルが広がってきていると感じています。今は自分の好きなものを好きなときに、ストレスのない環境の中で受け取ることが当たり前の状況です。
テレビやラジオ、雑誌は、当然ながら視聴者にそのコンテンツが届くのに対して負荷はないですね。だからネットでも同じように、好きなデバイスで好きなときに好きなコンテンツを選ぶことが求められており、そのためにはインフラの構築が一番の課題になっていると言えます。
同時に起きているのが、ファイルの巨大化です。テキストメインの非常に軽いものから、動画、音楽、ソフトウェア、ゲームなどに移り変わり、視聴者のメディアエンゲージメントがより強力になってきています。YouTubeに代表されるような、非常に重いコンテンツが多くなり、かつ集中アクセスが引き起こすピークトラフィックの峠が非常に高くなってきています。
それを効率的に運用するために、エンターテインメントメディア系に特化したCDNが必要となってきました。動画や音楽、ゲーム、ソフトウェアそして、ブランディット・エンターテイメント、いわゆるオンラインリッチメディアといった大型ファイルの効率運用、安定運用に特化したネットワークが求められています。
大手自動車会社から化粧品まで、企業サイトでもすでに使われている例は多いです。CDNを知らずに安易にメディアミックスをしてしまうと、突然テレビCMを経由したトラフィックが来て、サイトが落ちてしまう。
そうするとネット上の放送事故が起きますが、もはやそういったことも許されない時期が来ています。そこで、我々のような事業者が対応するということです。テレビ番組のあとの集中アクセスの危険は結構多いですし、あとはサイト上の投票システムやクーポン券のダウンロードなどもあります。このような需要は、どの企業にもニーズはあると考えています。
そうですね。たとえば、最近話題になったCMをストリーミングしているグリコさんのサイトはアクセスが多いですが、やはりクロスメディアを駆使している広告主にとっては、重要なのはテレビをはじめとするマス媒体からネット上のランディングサイトへのスパイクを捌くことです。
当社でも、視聴者と広告コンテンツ、メディアコンテンツ、もしくは音楽ダウンロードのダウンロード時間や表示速度と消費者ストレスがどれぐらい影響しているか、そのサイトに対するロイヤリティーがどれぐらい落ちるか、などを分析したいと考えています。
たとえ、女優さんをキャスティングするのに大きな投資をかけていいものを作ったとしても、配信がちゃんとできなければ大損になってしまいます。下手をすると、逆にブランドイメージに逆効果が出てくるケースも明白になってきているので、広告業界に限らず、すべてのネットのコンテンツ業者の中でニーズが高まっているという感じですね。
コンテンツの種類にかかわらず、大きなファイルがネットワークを移動する際には、間違いなくCDNが必要となってきます。例えば、マイクロソフトに代表されるソフトウェアアップデートもライムライトを使っています。先日も非常に大きなアップデートがありましたが、もちろん安定したパフォーマンスで配信しております。
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