M・キューバン氏、HDの魅力を語る

文:Greg Sandoval(CNET News.com) 翻訳校正:編集部2006年09月14日 05時00分

 ある時は実業界の億万長者、ある時はハリウッドのプロデューサー、またある時はNational Basketball Association(NBA)のダラス・マーベリックスの型破りなオーナー・・・。

 Mark Cubanと聞いて、たいていの人が思い浮かべるのはバスケットボールの試合で審判にかみついている映像だろう。インターネットラジオサイト「Broadcast.com」を設立し、1999年に57億ドルでYahooに売却した人物と認識している人も多いに違いない。Cuban氏にはもうひとつ、HDNetの共同所有者という顔もある。

 米国初の高品位(HD)映像専門TVネットワークを自認するHDNetを宣伝することにより、Cuban氏はHD規格の非公式のスポークスマンの役割を果たすようになっている。

 Cuban氏はHD規格の「顔」にはぴったりの人物だ。エンターテインメント事業を手がけるかたわら(George Clooney氏の映画「Good Night, and Good Luck(邦題:「グッドナイト&グッドラック」)」ではプロデューサーを務めた)、NBAチームのオーナーとして、スポーツマーケティングにも精通しているからだ。スポーツはHD放送の目玉コンテンツになると予測されている。グラウンドの草の一本一本までを映し出すHDの精細な画像は、お茶の間のスポーツファンの気に入るはずだとHD規格の支持者たちは言う。

 来月にはNational Football League(NFL)のシーズンが開幕する。多くのHD支持者たちは、この1年を機にHDが急速に普及することを期待している。

 CNET News.comは先頃、Cuban氏に電子メールでインタビューを行った。移り気なところもあるが、常に率直な意見を述べることで知られるCuban氏の矛先はCBS、ハリウッド、そしてアナログTVを観たいと考えているすべての人々に向かった。

--専門家の間ではスポーツはHD放送にうってつけのコンテンツだと言われています。今後、HD映像によるスポーツ中継はどうなると思いますか。

 「HD映像によらないスポーツ中継はどうなるのか」という質問の方が適切です。一度HD画質で試合を観てしまったら、二度と通常の画質には戻れないでしょう。通常の放送では映像がぼやけ、観るにたえないと感じるようになるからです。

 ホッケー、サッカー、野球、バスケットボール、フットボール、ラグビー、馬術--どんなスポーツの試合もHD映像の方がはるかに魅力的です。それ以外の映像は白黒映像と同じくらいの印象しか与えることはできなくなるでしょう。視聴者は何かが変だと思うようになるはずです。

 スポーツの中でも最もHDの恩恵に浴するのはホッケーとサッカーです。HDNetがこの2つに力を入れてきたのはそのためです。HD放送により、National Hockey League(NHL)のファンはついにパック(ホッケーで使用する円盤)を見ることができるようになりました。さらに重要なのは、ワイドスクリーンのおかげで競技場全体を見ながら選手の動きを追い、試合の戦略を観ることができるようになったことです。

 同じことはサッカーにもあてはまります。従来のTVではこうしたことは不可能でした。5.1chサウンドも劇的な違いをもたらします。「Sites and Sounds」機能を利用すれば、アナウンサーの声を消し、競技場の音にひたることができます。観衆の声、選手がボードに衝突する音、ショットがパイプに当たった音が聞こえてくる--これは従来のTV観戦とは一線を画する経験です。

--HDNetはすでに何種類かのスポーツを放送していますが、今後カレッジフットボールやその他のメジャースポーツの中継を始める予定はありますか。

 われわれはNHLとMLSもメジャースポーツだと思っています。ホッケーとサッカーはHD放送に非常に適しているだけでなく、米国でも最多の観客動員数を誇るスポーツだからです。この2つが必ずしもメジャースポーツに含まれていないのは、TV視聴率が低いからにすぎません。

 視聴率の点では、確かにホッケーとサッカーは苦戦してきました。ホッケーとサッカーの試合は、一般的なサイズのTV画面には適していないのです。しかし、HDNetの登場によってこうした弱点は過去のものとなりました。HDTVならNHLの試合もMLSの試合も十分に楽しむことができます。どちらにも熱狂的なファンがおり、視聴者の数は日に日に増えています。

--HDはどう進化するのでしょうか。来年または5年後にはHDはどうなっていると思いますか。

 一般家庭ではHDTVが加速度的に普及し、アナログTVの売り上げはほぼ消滅するでしょう。大きな障害は何もありません。すでに勝負はついています。HDTVが定着するのは時間の問題です。

--HDが次のトレンドになると考えたのはなぜですか。HD市場に参入したいきさつを教えてください。

 私は常に間違った常識を探すようにしています。そこにチャンスがあるからです。1990年代末から2000年代初頭にかけては、多くの人がHDTVの価格は高すぎ、今後もそれは変わらないと考えていました。

 私はHDTVのことを調べました。その結果、HDTVは視聴者に魅力的な視聴経験を提供するだけでなく、他のデジタル製品と同じようなパターンでコストパフォーマンスが改善される可能性があることに気づきました。機能と性能は改善され、価格は急速に下がるでしょう。

 アナログTVの進化が止まる一方で、デジタルTVは進化を続け、価格は下がり、いずれアナログTVを駆逐することは間違いないと思われました。壁に掛けられるという外観上のメリットを考え合わせれば、少なくとも私にとってはHDTVの優位は考えるまでもありませんでした。

 この考えに基づき、私はPhil GarvinとHDNetを立ち上げました。2000年から準備を始め、2001年9月21日にサイトをオープンしました。最初の課題はHDコンテンツを見つけ、作成すること、配信と視聴者を確保すること、そしてTV業界がHDの価値に気づく前に地位を確立することでした。

 魅力的な番組編成により、HDNetは着実に地歩を固めつつあります。「Dan Rather Reports」、NHLホッケー、MLSサッカー、「HDNet World Report」といった多彩な番組に加え、オスカーにノミネートされた「Enron: The Smartest Guys in the Room」やSteven Soderberghの「Bubble」など、劇場公開と同時にHDNetで放送されるオリジナル映画もたくさんあります。もちろん、HDNetとHDNet Filmsのウェブサイトにはさらに詳しい情報が載っています。

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