--あなたは、これまでも自分と同じフィールドの大企業に戦いを挑んで、最後は法廷で争ってきましたね。Appleともそうなるという危惧はありますか。
Appleがわれわれを訴えると思うかという質問でしたら、そうでないことを祈ります。われわれは正しいことをやっているのですから。
でも、大企業ともめごとになったら、最終的に裁判になることはあります。だからこそ、技術者や私のような立場の人間はいま実行に移す必要があるのです。いまこそ立ち上がるときなのです。5年経って、プロプライエタリな世界が完全に定着してしまってからでは、もう遅いのです。
--MP3Tunes プロジェクトの状況はどうですか。
順調です。MP3.comのときとは全然違います。MP3.comでは、われわれはあらゆる意味でデジタル音楽業界のリーダーでしたから。MP3Tunesでもう1度出直しという感じです。つまり、どうしたら世間の注目を集めることができるのか、ゲームに参加して業界に影響を与えるにはどうすればよいのかを考えたのです。
今はまったく業界も様変わりしてしまったので、MP3Tunesでは、新しい方向性を見いだすことに注力しています。携帯電話への音楽配信、さまざまなプレイヤーへの音楽の供給、相互運用性。MP3Tunesがリーダーになるべきなのはそういった分野であり、そうすることで世間の注目を集める存在になることができると思っています。
--LinuxユーザーやLinspireのユーザーは当然MP3Tunesに賛同するのではないですか。彼らに対するマーケティングは成功しましたか。
ええ。「MP3フォーマットで音楽を販売してくれてありがとう」というメールはひっきりなしに送られてきます。しかし、それはビジネスではありません。単に、オープンソース信者やLinuxユーザに音楽を販売しているだけです。
われわれは、それよりはるかに大きい目標を目指す必要があります。われわれは、MP3.comでやったことを、MP3Tunesでもできればよいと思っています。つまり、業界に革命を起こすことです。
--今後1〜2年で、音楽業界に何が起こると予想されますか。ダウンロード市場はAppleが支配し、サブスクリプションビジネスも出始めています。しかし、あなたが言われたとおり、それらはすべてプロプラエタリフォーマットでのビジネスです。今後、これらのビジネスはどう変わるのでしょうか。
まず、これまでわれわれが経験してきたことはすべて、MP3とP2Pがあったればこそであるという点を指摘しておきたいと思います。つまり、好きな曲を1度に1曲だけ買うことができるのは、MP3というフォーマットが存在しているからこそ実現できたのだということです。
なかには、「AppleのFairPlayが非常によくできており、Steve Jobsの話に説得力があったから、いまの状況があるのだ」というようなことを言う人がいますが、そんなのは戯言です。現在のデジタル音楽業界があるのは、MP3とP2Pが一貫して業界を動かす圧力をかけてきたからです。次の段階に進むには、業界に、オープンな標準とP2Pからの圧力を感じさせ続けることができるかどうかにかかっていると思います。
確かにAppleは成功を収めましたが、それでもまだまだ微々たるものです。MP3、そしてP2Pの成功は、音楽業界の変化を促進します。従来収益をあげていた分野は後退を余儀なくされ、特にレコード会社は、人々が音楽で革新的なことができるようにライセンスを供与し始めるかもしれない。私は「世界はこうあるべきだ」ということをはっきりと言ってきました。私は、すべての音楽がどこでも買えるようになり、どこからでも好みのプレイヤーに落とせるようになることを望んでいます。
それが最終目標です。実現は3年後、5年後、あるいは10年後かもしれない。私にも分かりません。
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