--量産化で苦労した点は。
一点ものと違って微調整ができないので、ある程度の組み立て誤差を吸収するロバストな(安定性の高い)運動制御を実装する点が大変でした。このために、あえて歩行スピードなどの性能を抑えています。
逆に言えば、今後は個人の要望に合わせてnuvoをチューンアップするサービスも可能になるでしょう。もしユーザーから「自分のnuvoの性能を上げたい」というニーズがあれば、それに応えることができます。自社で部品までを開発しているので、機能を進化させやすいといえますね。
--マザーボードの設計ではルネサス テクノロジと協力していますね。これはなぜですか。
nuvoは自動車で利用される車内ネットワークプロトコルの「CAN」を採用しています。CANは配線が少なくできて、ボディを軽量化できるメリットがあります。さらに、自動車に使われているのでスピード面や信頼面でも申し分ない。こう考えたとき、CANに強い企業がルネサス テクノロジだったんです。
--nuvoの受注状況はいかがですか。
堅調に推移しています。購入者はIT関連企業の経営者や、クリエーターの人が多いですね。ITとロボットを組み合わせた世界や価値を想像できる人が購入するようです。
この層は、いわば20年近く前にMacintoshやPCを買った人たちなんです。ワープロ専用機ではなく、あえてパソコンを買った世代です。「パソコンで将来はすごいことができるだろう」という夢を見て、「そこに参加したい」もしくは「そういった世界を早く知りたい」という気持ちでパソコンを購入した。nuvoにも同じ気持ちを持ってくれているようです。
--ZMPの現在の主な収益源は。
以前はロボットの派生ビジネスが中心でした。PINOのイベントの出演料や、玩具のライセンスなどです。現在はnuvoの足部分を切り出した二足歩行ロボットの教材である「e-nuvo」の売上が中心です。e-nuvoは工業高校や専門学校、大学向けに販売しており、価格はセット一式で68万400円です。これまでに100台ほど受注しています。今後はnuvoや、現在開発中の新製品が事業の中心になっていくでしょう。
--ロボット市場はまだ揺籃期にあって、多くの企業が手探りでロボットの事業化を目指しています。ロボット市場がこれから発展するためのブレイクスルーはどこにあると考えますか。
ロボット市場に、ソフトウェアベンダーが入ってくる必要があります。今はハードウェアベンダーが中心なので、どうしても発想が限られてしまう。ソフトウェアベンダーの発想力を生かして、ロボットの用途を増やさないといけません。
ロボットというと、どうしてもイベントで動いたり踊ったりしているイメージや、SF小説の印象が強すぎるんです。IT関連企業の経営者と話をしていても、ロボットが自分たちのビジネスとどう関わってくるのかが想像できないようなんです。だから、ロボットビジネスへの参入者が少ない。
nuvoではユビキタスエンターテインメントと共同で、nuvoで携帯向けのスケジュール管理サービス「UBIMEMO(ユビメモ)」が利用できるようにする予定です。nuvoのAPIについても、パートナー企業に公開しているところです。
--今後の展開は。
nuvoは高さ39cm程度の小型ロボットですが、2006年には70cm程度の中型を、最終的には人間並みの大きさのものを手がけたいと考えています。
それから、全く新しいコンセプトのロボットを現在開発しています。10〜20代の若者が買えるようなロボットを作りたい。価格は10万円以下で、若者が「かっこいい」と思って欲しくなるようなものです。2004年の10月頃からプロジェクトが動いています。2006年の初旬には発表できる予定です。
私はロボットのイメージを変えたいと思っています。これまでのロボットのイメージは「架空の世界の存在」ですよね。そうではなく、もっと身近な、毎日使えるものにしたいと思っています。来年発表するロボットは「ロボット」と呼ばれたくないですね。詳しい内容は言えませんが、「クールなガジェット」とでも呼んでもらえたら嬉しいと思います。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス