「技術は差別化にならない」--エキサイト山村社長 - (page 2)

インタビュー:山岸広太郎(CNET Japan編集部)
構成/文:永井美智子(CNET Japan編集部)
2004年11月26日 19時59分

--ネット関連企業では、技術に力を入れるところが多いようです。

 私も技術系の仕事をしていたことがありますが、技術よりも大事なものがあると思うんです。それはサイトのイメージやブランド、ユーザビリティなどです。たとえばエキサイト翻訳は、他のサイトと同じシステムを使っていますが、それでも「エキサイトの翻訳はいい」と言われる。「翻訳といえばエキサイト」というようにすりこんだんでしょうね。他社に先駆けたサービスだったため、どうもエキサイトの翻訳がいいらしいという口コミで広まった。エキサイト恋愛結婚も同様です。そういう意味では広告宣伝をかけなくても、差別化されたいいものを作ればヒットするんです。

 我々はブランドイメージのポジショニングをしっかり築いて、そこに合う人がついてくるようなものを作らないといけない。自分たちの味を出さないと、そのサイトに行く理由がないんです。それなら「Yahoo! JAPANに行こう」となってしまう。どこにもないものを一つずつ増やしていけば、エキサイトを訪れる理由ができる。

 Yahoo! JAPANだけで全部の用事を済ませる人は少ないと思います。Yahoo! JAPANでオークションや掲示板を使って、マイクロソフトのMSN JapanでHotmailやインターネットメッセンジャーを使う。そういったユーザーも本はAmazon.co.jpで買って、ショッピングは楽天市場で行うといったように、サイトを使い分けています。

 エキサイトだけで全部を囲い込むという考え方はユーザーのライフスタイルに合わないんです。アルマーニの服を着て、ユニクロでパジャマを買って、フレンチレストランでディナーを食べるけれども昼は吉野家で牛丼を食べているような人たちに全部を提供しようというのは無理です。どこにターゲットを絞ればいいかわからない。

--今後のキラーコンテンツは何でしょうか。

 自社の編集能力が上がったと思っていますので、編集を生かしたファッションや音楽コンテンツがあると思っています。先日始めたグローブ・エキサイトでは、globeのツアーを追いかけたり、blogを立てたり、チケットや着うたを販売したりといったようにトータルパッケージをエイベックスと一緒に提供しています。こういった、編集能力を生かしたコンテンツやサービスで差別化を図ることに力を入れていきたいですね。

--ポータルビジネスの魅力はどこにありますか。

 ネットビジネスについて考えたとき、インフラとショッピング、それにメディアビジネスの3つがあるとまず大きくとらえたんです。なかでもネットはテレビ・新聞・雑誌・ラジオに次ぐ第5のメディアになっていく。その中でキープレイヤーになるのがポータルサイトだと思ってエキサイトに入社しました。

 ネットで1000万人にリーチするメディアが4、5社できたとしても、それだけの影響力を持つメディア企業は他のメディアと合わせて20社程度しかない。その中の1つを持てるということが企業にとってどれだけ意味のあることかを考えれば、エキサイトに投資する意味はあると親会社の伊藤忠商事には言い続けてきました。メディアというのは世の中の流れを作る役割もある。そういう企業をグループに入れられるというのは数少ないチャンスだと。旅行、証券、音楽などの事業を考えれば、ポータルは21世紀の商社みたいなものですよね。世界に広がっていくにはいいチャンスだと思っています。

--上場で得た資金の使い道は。

 当面は中国での事業展開や音楽・ゲームへの投資に充てていきます。海外展開については、日本発のグローバルメディアを目指したいですね。日本発のメディアというのはヤフーも楽天もまだできていないことです。伊藤忠の海外ネットワークを活用できるでしょう。商社の力を使って海外事業を伸ばしていければ差別化できるのではないかと思います。

 課金コンテンツについては、現在携帯電話用コンテンツを合わせて約50万人の課金ユーザーがいます。これが100万人になってARPUが1000円としても、年間120億円の売上になる。こう考えるとまだまだ成長余力はあると思います。

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