「広告費10億円、05年度売上高60億円」--検索市場に切り込むGMOの狙いとは

インタビュー:山岸広太郎(CNET Japan編集部)
構成/文:永井美智子(CNET Japan編集部)
2004年10月29日 18時28分

 「クイック」という単語を聞いて、何を思い浮かべるだろうか。AppleのムービープレイヤーQuickTimeを思い浮かべる人もいれば、金融情報会社を思い浮かべる人もいるだろう。しかしグローバルメディアオンライン(GMO)代表取締役会長兼社長の熊谷正寿氏は、今年の11月以降、誰でも黄色いクマのキャラクターがいる検索サービスを思い浮かべるようになると考えている。

 GMOは9月19日、複数のサイトを一括検索できるサービス「9199.jp(クイック ジェーピー)」を開始した。これはアクセスポートの運営する日本語キーワード検索「JWord」をベースにしたもので、アドレスバーにキーワードを入力すると、ExciteやYahoo! JAPANなど複数のサイトを一括して検索できるというものだ。10月18日にはアクセスポートの親会社で、JWordの検索技術を提供している3721.comを完全子会社化し、アクセスポートも連結子会社としている。

 同社は9199.jpの宣伝に約10億円をかけ、TVCMを含めた大々的なキャンペーンを行っていく。2005年度の売上目標は60億円と鼻息は荒い。

 Google、Yahoo、Microsoftが三つ巴の戦いを繰り広げる検索市場において、GMOはどのようなポジションを狙っているのだろうか。熊谷氏に新サービスの狙いと同社の事業戦略について話を聞いた。

--検索サービスの9199.jpをリリースしましたね。この狙いについて聞かせて下さい。

9199.jpの検索画面。アドレスバーに単語を入力すると複数のサイトを一括検索できる(クリックすると拡大します)

 9199.jpは「インターネットをもっと便利にクイックに!」をテーマに、インターネットをさらに使いやすくしたいと考えて開発したサービスです。

 GMOは創業当初から、「すべての人にインターネットを」という理念を掲げています。プロバイダのinterQなど接続回線から事業をスタートさせましたが、アクセス回線は現在、E.M.Rogersの普及曲線でいうラガード(採用遅滞者)層にまで広まっていて、ほとんどの人がインターネットアクセスを体験しています。

 これからはインターネットの中身、つまりコンテンツの時代だと考えています。コンテンツの量は増えてきていますが、老若男女すべての人がそれを使いこなしているわけではありません。

 例えばIT業界の人はGoogleなどの検索サイトで、キーワードの「AND検索」や「OR検索」ができます。でも、私の父母が同じことをできるかといえば、できません。そういった人がどうやってインターネットを便利に使うかと考えたときに、必要なのは誰でもいつでもどこでも、プロのように使えるサービスだと考えたのです。

 確かに今のインターネットは昔に比べて使いやすくなっています。それでも弊社のサポート部隊の話を聞いていると、「Windowを閉じて下さい」と言ったら窓を閉めた人がいたそうですから。本当にいるんですよ、こういう方が。

 9199.jpなら、アドレスバーに検索したい単語を入力すればExciteやYahoo! JAPAN、MSNなどいくつものポータルサイトの検索結果を簡単に見ることができます。キーワードに関連するニュースや掲示板の情報、辞書や地図も見られます。入力は1回だけで、あとはクリックしていけばいいんです。

 もう1つの機能が9199電話帳です。日本には約635万の事業所があると言われていますが、事業所のウェブサイトは100万件に満たないと思います。個人を合わせても200万件くらいでしょう。つまり、ウェブには出てこない会社や店舗が多いわけです。特に病院などはサイトを開設しているところが少ない。そういった事業所の情報を探せるのが9199電話帳なんです。

 要は、日本中の事業所がホームページを作るのが遅いから、GMOが無料で作ってしまったんです。約840万件の店舗や会社の名称/郵便番号/住所/電話番号/地図が掲載された簡易ホームページができたことになります。

--検索があまり得意ではない層をターゲットにされているようですが、そういう人に新しいインターネットサービスを利用してもらうのは難しいのではないですか。

 そうですね。そこでTVCMを大々的に流そうと考えています。超有名タレントを起用して、大量に露出させます。10億円くらいの広告費用をかけるので、今世紀最大級のインターネット関連プロモーションになるんじゃないでしょうか。僕は中途半端がキライですから(笑)。数カ月後には、9199.jpは知らない人がいなくなるくらいのブランドになると思います。

 僕らのメディアのパワーを最大限に引き出すためには、一般の人に対する刷り込みが重要なんです。例えばキリンの「生茶」も、CMだけを見て飲もうと思う人はいません。CMを見て、コンビニで見かけたときに買おうと思うわけです。9199.jpもバナー広告などのクリック率を上げるためにCMで刷り込んでいきます。

 お米の炊き方ではないですけれども、事業も「はじめちょろちょろ」で、行けると思った時点でどんといけと言っています。ドメイン事業もはじめは様子を見ながらやっていましたが、行けると思ったので当時何億円も広告費をかけて、「ドメインとるならお名前.com」というブランドを築いたわけです。そういうことがすごく重要ですね。

--9199.jpの収益源は何ですか。

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