インタビュー:Michael Kanellos(CNET News.com)
文:永井美智子(CNET Japan編集部)
2004/11/16 19:10
NTTドコモは高い勉強代を取り返す時期に来たようだ。
ドコモはかつてW-CDMAやモバイルマルチメディアサービスの海外展開を目指し、米AT&T WirelessやHutchison 3G UK Holdingsなどの海外オペレータに対し、約1兆9000億円の投資を行った。しかし各社の株価が下落したことから、2002年度には株式評価損によって巨額の特別損失を計上し、上場以来初の最終赤字を出している。
同社はこの教訓を生かし、出資による提携からiモードライセンスの提供へと戦略を変更した。iモードサービスを展開するために必要なノウハウや関連技術、特許等を提供してライセンス収入を得るという手法だ。この方向転換はこれまでのところ順調で、11月8日にはイスラエルのCellcom Israelとiモードライセンス契約を締結し、2005年6月には世界10カ国でiモードサービスが提供される予定だ。
国内の携帯電話市場が伸び悩みを見せるなか、iモードの海外展開は新たな切り札となるのだろうか。iモードの立ち上げを指揮し、iモードの生みの親と言われる松永真理氏など外部の人員を積極的に採用して同サービスを成功に導いたNTTドコモ 常務取締役 プロダクト&サービス本部長の榎啓一氏に、米CNET News.comのマイケル・カネロスが話を聞いた。
--ドコモは一時期、投資した海外企業の株式評価損で巨額の特別損失を計上しましたが、現在の海外戦略はどのようになっているのでしょうか。
Hutchison 3G UK Holdings Limitedの株式はHutchison Whampoa Limitedに売却しましたし、AT&T Wireless Servicesの株はCingular Wireless LLCに売却します。
過去の投資はうまく行っていませんが、iモードの海外展開という意味では世界9カ国のオペレータにiモードライセンスを供与しており、加入者数は300万件を突破しています。
--過去の投資はなぜうまく行かなかったのでしょう。
難しい質問ですね。企業は資本の論理で動きますから、出資比率が低いと相手企業を思う通りに動かすのは無理なんです。だからこそVodafoneは海外オペレータの株式を51%以上取得して子会社化する方策をとっています。
これまで日本が海外企業に出て成功した例というのは少ないですよね。トヨタ自動車や本田技研工業などが工場を海外に進出させた事例はありますが、日本発のサービスが海外に出た例は少ない。ドコモは難しいチャレンジをしたと思います。
iモードが海外にも広まったのは、各国のオペレータがiモードを受け入れる環境にあったからです。欧州でも音声通話市場が飽和してきていて、新たな収益源を求めていた。ARPU(一顧客当たり平均収入)を引き上げる方策を、どこのオペレータのトップも考えていたんです。そしてそれを成し遂げたのがiモードしかなかった。だからこそ採用に至ったんです。
実際、iモードの採用によってオペレータのARPUは上がりました。隣国の企業が成功すると“東洋の特殊事情”ではないと他のオペレータも信じるようになった。どこの国でも、人間は変わりません。ゲームやEメールを楽しむんです。
海外のオペレータは回線を提供するだけですが、日本ではキャリアが商品開発を行ってきました。端末に載るブラウザやメーラー、javaアプリなどはすべてドコモが設計し、差別化を図ってきた。iモードは今や1兆円規模の産業になっています。それを見てVodafoneが「ボーダフォンライブ!」という名称でサービスの提供を始めている。
今後は世界的なオペレータグループがいくつかできて、彼らが決めた仕様をベンダーに実装するよう求める世界になるでしょうね。
--北米での展開はどうでしょう。車通勤が一般的な状況でiモードは成功しないという見方もあります。
それは日本の状況を誤解していますね。東京のような都市部では電車通勤が一般的ですが、地方に行けば車を利用する人が大半です。日本人の半分は家に車が2台あるんですよ。1台は夫が通勤に利用して、もう1台は妻が買い物などに利用しています。そしてこういう人のほうがiモードを使うんです。iモードが使われるのは通勤時間ではなく、会議の合間などのニッチタイムなんです。
米国ではAT&T WirelessがPocketNetというiモードに似たサービスを提供していましたが、ビジネス市場を対象としていた。iモードは180度違うアプローチで、コンシューマーを対象にしたんです。
iモードの最初のターゲットは若い男女でした。新製品にすぐ飛びつく層です。有料コンテンツが月額300円というのも払いやすい価格を激論して決めましたし、小さいディスプレイに文字を何文字表示させるかも相当議論しました。とにかく、コンシューマー寄りにデザインしたんです。結果を見れば、ターゲットはiモードが正しかったと言えますね。
--iモードの次の展開は。
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