Firefox開発の中心的人物で、現在はGoogleでソフトウェアエンジニアを務めるDarin Fisher氏が先ごろ、もじら組が主催したイベントにあわせて来日した。同氏のGoogle入社は、Googleが独自ブラウザ開発に乗り出すのではといった憶測を呼んだこともある。Google移籍の真相と最近の活動について聞いた。
2000年の9月にNetscapeで働き始め、ウェブブラウザの開発チームがなくなったのをきっかけにIBMに移りました。そこでMozillaプロジェクトを手掛けました。Googleに加わったのは1年半前ですが、会社が変わってもやっていることは同じで、ここでの仕事もFirefoxを開発することです。
主にはウェブページの描画を行うレイアウトエンジン「Gecko」の開発を手掛けています。このエンジンのスピードを速めたり、安定性を高めたり、表示の信頼性を高めたり、といったところです。2005年は「Software Update(「ソフトウェアの更新」機能)」を担当しました。
Googleがよりコンシューマーに近い会社で、ユーザーエクスペリエンスの向上などに重点を置いていたからです。これに対してIBMではビジネスで役立つか否かといった箇所に重点を置いていました。
コンシューマー向けのモノづくりと、ビジネス向けでは、まったく異なるマインドセットを要求されます。コンシューマーフォーカスのGoogleのそれは、むしろNetscapeのそれに近いと感じています。実際、NetscapeとGoogleはいろいろ類似点が多いです。
Googleは非常に楽天的で、エネルギーに満ちあふれ、仕事をするにはエキサイティングな場所です。もっとも、これは表向きの理由で、実はもうひとつ理由があります。IBMでの勤務地はテキサス州オースティンにあって家から離れていたのですが、Googleの本社(カリフォルニア州マウンテンビュー)なら車で通える、というものです(笑)。
Googleでは、そうした数の公開は控えています。また、IBMがその数字を公式にしているかもわかりません。ただ、どちらの会社でも、それなりに大勢のスタッフがFirefox開発に携わっています。
実際、IBMはScalable Vector Graphics(SVG)関連の開発をほとんど自社社員だけでやっています。それ以外にもJavaやWebサービスなどのインターネット標準が、Firefoxできちんと動くかも精力的に手掛けています。彼らは開発環境の「Eclipse」をはじめとした多くのJavaプログラムにGeckoのレンダリングエンジンを組み込もうとも考えているようです。
一方、Googleはユーザーインターフェースなどの部分などで貢献しています。この数年で私自身のフォーカスは大きく変わりました。今はFirefoxをもっと普及させることに関心があります。
前の会社でのフォーカスは、Firefoxをエンタープライズ市場できちっと使えるブラウザにすることでした。これは大変違うフォーカスです。例えば2005年に手掛けたSoftware Update機能はエンタープライズ市場では不要な機能になってしまいます。ほとんどの大企業は独自にソフトウェアアップデートの仕組みを用意しているからです。
しかし、私はFirefoxを普及させるうえでも、ユーザーに最も安全なバージョンのFirefoxを使ってほしいという願いがありました。そのためには、この機能の提供が必要だったのです。要するに今の私はもっとコンシューマーの側に目が向いているということです。もっと、人々が喜んで使うようなソフトにしたいんです。人々が喜んで使うのは、より速く、より簡単なソフト。そして、これは人によってその意味するところは違うかもしれませんが、より安全な製品でしょう。
それはもう1年半前のことですよね。そんなブラウザは結局、登場しませんでしたよね(笑)。噂は間違いです。Googleの真の目的はFirefoxを成功させることにあります。
未発表のサービスについては語れないので、既に発表されているものをベースに話しましょう。たとえばGoogleは、「Google Web Accelerator」という検索結果のウェブページを速く表示するための機能を提供していますが、私が最初に手掛けた仕事のひとつは、これをFirefoxにもちゃんと対応させることでした。こうした機能は個人的開発だけではなしえなかったことで、Googleのような会社がサーバ側のインフラストラクチャも提供しているからこそ成り立っていると思います。
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