Cypress Semiconductorの最高経営責任者(CEO)T. J. Rodgers氏にインタビューをすると爽快な気分になる。彼は率直にものを言うからだ。
ネットの中立性は「アメリカ的でない」、政府が助成する研究プロジェクトは「たいてい失敗」、クリーンテクノロジー/エネルギーは「騒がれすぎ」といった具合である。Rodgers氏は長年、市場主導のアプローチを提唱してきたシリコンバレーの自由論者でもある。
Rodgers氏は今、微妙な立場に置かれている。Cypressが子会社のひとつとして、太陽電池パネルの製造で急成長を遂げているSunPowerを傘下におさめたからだ。太陽光発電は巨額の補助金を受け取っている。Rodgers氏は持論との矛盾を認めつつも、従来型発電のコストが急上昇するにつれて太陽光発電への補助金は減ると主張する。
われわれが買収した時点では、SunPowerはごく小さな企業にすぎませんでした。四半期の売上高は数百万ドルといったところです。私はSunPowerの創設者であるDick Swanson氏を知っていました。同社は高効率の太陽電池を開発していたため、2億ドルを投じて製造工場を建設することにしたのです。
環境関連のアイディアの問題は、その多くが試用段階を出ていないところにあります。新しい技術は商用化されて初めて大きな影響力を持つようになります。われわれはSunPowerの技術を商用化するために2億ドルを投資することを決断しました。
この業界にそのような傾向があることは確かです。明白な矛盾があることも認めます。しかし、世界的に見れば太陽光発電はそれほど多くの援助を得ているわけではありません。たとえば、世界第2位の太陽光発電市場である日本では、政府の補助金が昨年で打ち切られました。日本政府はこの産業の形成を支援するために10年にわたって補助金を提供してきましたが、現在は助成目的の資金は一切提供していません。
問題は、日本では電力料金が非常に高いために太陽光発電に対する補助金が不要になっていることです。もっとも、他国でもまもなく同じようなことが起きるでしょう。電力料金は今後高騰すると見込まれており、そうなれば補助金は重要ではなくなるからです。
私は補助金が嫌いです。政府はどんな理由であれ、国民から取った金を別の人間に与えるべきではありません。SunPowerを含め、企業向けの補助金は廃止するべきだと思っています。とはいえ、ドイツの補助金なら・・・・・・大賛成です(笑)。ドイツ政府が補助金をくれると言うなら、よろこんで頂戴します。私が気に入らないのは米国政府の補助金です。しかし過去10年ほどについて言えば、政府の補助金は太陽光発電の普及を加速させたと評価してよいのではないでしょうか。
現在、(太陽光発電)システムには約30%の補助金が提供されています。米国の補助金は基本的には政府の補助金であり、払い戻しやその他のインセンティブの形で提供されています。システムの設置費用を1万ドルとすると3000ドルが払い戻されるので、実質的な負担は7000ドルとなります。つまり、費用を30%下げることができれば太陽光発電は産業として自立し、援助を受ける必要はなくなります。
30%というのはそれほど無謀な目標ではありません。この目標を達成するためには、まずシリコンの供給量を増やす必要があります。太陽光発電のコストが高いひとつの理由として、シリコンの供給不足があるからです。今年は太陽光発電向けシリコンが半導体向けシリコンを抜くと見られていますので、シリコンの確保は急務です。
シリコンの価格も以前の水準、つまり1キログラムあたり40ドル未満に戻す必要があります。現在は90ドル前後まで高騰しています。薄型太陽電池の量産体制を整備することも不可欠です。現在の太陽電池は厚みが約250ミクロンもあり、大量のシリコンを必要とします。将来的にはシリコンの必要量は減るでしょう。エネルギー変換は基本的にウエハの表面で行われるため、製造設備も改善する必要があります。
(太陽光を電力に変換する)効率も重要です。SunPowerはすでに22%の変換効率を達成しています。太陽光発電の変換効率は15%が一般的ですから、SunPowerの技術を使えば同量のシリコンから50%多くの電力を生産できることになります。
さらに、太陽光発電の導入費用も現在の2分の1以下にする必要があります。これは私には思いもよらないことでした。
それ以前の問題です。現在、太陽電池モジュールの価格は1ワットあたり3ドル50セントから4ドルです。ところが、これを住居に設置すると1ワットあたり8ドル50セントになってしまう。住居に設置するだけで価格が倍になるのです。この問題をなんとかしなければなりません。
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