まず、Eyefiクラウドとして続けていくことでのデメリットがまずありました。それは、Eyefiカードのクラウドサービスとして捉えられてしまうことです。ユーザーにカードがないと使えないと思われてしまうのは、機会損失になってしまう。それが名称変更のきっかけです。
そういった意味では、リコーやペンタックスといったブランドイメージも付けたくありませんでした。ですから、「リコー Keenai」でも「ペンタックス Keenai」でもありません。Keenaiの現状は、9割方がキヤノンやニコンのユーザーですから、リコー、ペンタックスという名称を付けると、ユーザーが離れてしまう恐れがある。それを避けるために、Keenaiとしました。
Keenaiの由来は、「Keen(キーン)」の意味である「鋭い」と「AI(アイ)」=眼(Eye)、そしてAI(人工知能)をかけています。
そこは反省しきりです。どのように変えていくかは、シリコンバレーにいるスタッフと話し合っていました。私たちの方では、2016年11月17~18日に告知すると認識しており、実際にメールをユーザー宛に配信していたのですが、すべてのユーザーに行き渡る前にアプリがリリースされてしまったというのが内情です。本来であれば、告知から1カ月程度の間があればよかったのですが、告知日と思い込んでいたこともあり、このような結果になってしまいました。
それは、準備の問題です。買収のクローズが2016年6月15日だったと記憶していますが、そこからのスタートなので、間に合いませんでした。クローズした後はドメインの変更、各配信サイトの調整を行いました。特にややこしかったのは、配信サイトの対応です。会社が変わっているので、契約の見直しなどから開始せざるを得ず、準備に時間がかかってしまいました。
それについては考えています。もちろん、今こうしますという約束はできないのですが、Eyefiカードには1年間の利用権が付いています。そういったことを、THETAであり、他のカメラでもやっていくつもりではあります。
ただし、カードと違ってカメラは(出荷台数の)桁が違うので、単純にバンドルしてしまうとストレージの問題などもでてきます。なので、そこは慎重にしなければならないと考えています。また、THETAの場合だと、現状では使えない状態なので、バンドルしても意味がない。その辺は調整しつつ対策していきます。
それについては、これからの話になりますね。今はまだ始まったばかりで、これからどんどん広げていかなくてはならない。あえて言うなら、そこが苦労でしょうか。加えるなら、開発スタッフとして、Eyefiに在席していたエンジニアチーム(10人前後のスタッフを引き継いでいる)なので、カルチャーが異なることですね。
私の方針としては、基本として任せています。パテントの問題などには介入することもありますが、今回のロゴや名前についても、これはどうなんだろうというもの以外は、はじいていません。ただ、ベンチャーだと許されたことが、リコーでは許されないということもあります。
まず、リコーだけのサービスではないという前提の上で、本来の目的であるカメラを取り巻く環境への対応を行っていきます。注力している点が2つあります。ひとつは「インテリジェンス」の部分です。今、Keenaiでは(画像の自動解析による)タグ付けをしていますが、たとえば顔の認識・認証を入れたり、カメラメーカーならではの画質向上機能を入れたりといったことです。サービスとしてのターゲットは、写真愛好家やプロのフォトグラファーなので、そういった人に評価される機能を追加していきたいですね。
もう1点は、THETAのインテグレーションです。THETAというのは、まだ閉じた世界の製品です。THETAを使う時はTHETAのアプリを利用します。一方でGRなどのコンパクトデジタルカメラやデジタル一眼レフカメラを使うとKeenaiなどの別アプリを利用していると思います。それはとても面倒なので、まずはそこを合致させます。今は、360度画像のビュー機能を搭載していますが、ただ見えるだけなので、これからできるだけ機能を入れて行きます。
また、リコーが有するレンズ資産を活かして、樽型や糸巻き型などの歪みを補正する機能の搭載を予定しています。また、カメラの中に、肌色の色調やレンズの補正、HDRなどの機能が搭載されていますが、その技術をクラウドやKeenaiの中に持ってきて、カメラで撮った後にクラウドなどで処理することなどを考えています。
弊社のカメラに搭載されている「シーンアナライズオート」には、ディープランニングを活用した学習機能が搭載されています。シーン判別の学習には大量の写真が必要ですが、Keenaiは膨大なデータの処理を得意としています。Keenaiで得られた情報は、カメラ開発にフィードバックされますが、この学習機能をクラウドにも展開する可能性はあると思います。
Keenaiの今後を考えたとき、「カメラメーカーが買ったからよかった」と言ってもらえるようにしないと、意味がない。そういった評価が得られるように改良していきたいと思います。
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