2013年に登場したフィリップス エレクトロニクス ジャパンのLED照明「hue(ヒュー)」は、あらゆる意味で“型破り”な照明器具だ。インターネット接続が必須という製品内容、直販サイトやインテリアショップなど限定された販路。LED照明で世界No.1シェアを持つフィリップスが、欧米とは異なる照明文化を持つ日本で挑むhueの戦略を、ライティング事業部 ゼネラルライティング マーケティングマネジメント久保徳次氏に聞いた。
hueはシリコンバレー出身のエンジニアと社内の人間がチームとなって2011年に商品コンセプトが誕生しました。インターネットにLED電球をつなげたら何ができるのか、というアイデアからスタートした商品で、ユーザーターゲットをセグメントして作った商品ではありません。どちらかというと技術の種があって、その中で何ができるのかをブレストしながらできた商品なんです。
2012年にとあるショーでコンセプトモデルを発表したのですが、フィリップスの商品でありながら、アップルのエコシステムと非常にマッチしていたり、また別の企業のコンセプトに合致していたりすることがわかり、商品化を推し進めてきました。
欧米で2012年に発売したところ、センセーショナルなヒット商品となりました。その後オーストラリアで展開し、日本には2013年に導入しました。
フィリップスはグローバル企業ですから、商品導入のタイミングはすべてグローバルベースで考えています。市場規模から言えば日本よりも中国や東南アジアの別の国に導入するのが通常なのですが、hueに関しては日本に導入すべき明確な理由がありました。
それはスマートフォン、なかでもiPhoneの普及率が導入当時大変高かったからです。またWi-Fiの普及率がアメリカと同程度で、ITに関してリテラシーの高い国というイメージがありました。
ただ、hueは欧米のメーカーとフィリップスがともに提唱している「ZigBee Light Link(ジグビーライトリンク)」規格を使用しているのですが、まだ日本では知られておらずその辺りの規格をクリアにすることに時間を費やしました。結果、米国に遅れること約10カ月、2013年9月に日本市場に投入できました。
厳しいというよりも、製品自体がまったく異なります。欧米向けに作っている電球を日本仕様に変えるのは、ほぼ別の商品を作るくらい時間も手間もかかります。これはLED電球に限らず「ノンフライヤー」や「ヌードルメーカー」も同様で、主に欧米向けに商品を展開しているフィリップスでは常について回る問題でもあります。
ただ、この時に質を落とすことは絶対にしません。例えば8割のスペックだったらそこまで時間をかけずに作れることもあります。ですが、それだとフィリップスのコンセプトに合わない。あくまで欧米のユーザーが使って喜んでいるのと同じ光量、色数、操作性を保ったまま日本仕様に作り変えなければ意味がないのです。
もちろんそこまでして日本仕様を作るには、日本市場であれば受け入れられるだろうという見込みがあるからです。日本はITに強い土壌がありますし、インターネットにつながる電球という新しい形の照明に対する需要がある。ですから、日本向けにするためのコストもムダにはなりません。
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