ウェブ解析を十分に活用するためには、全社的にウェブに取り組む体制を作る必要があるというのが同氏の主張だ。組織的な活用がなければオンラインマーケティングの成功は実現しない。組織的な活用とは、すなわち「戦略」である。
ダイクス氏は、企業が取り組みで行うべき項目を大きく「人」「プロセス」「道具」の3つに分類し、その上で7つの行動としてリストアップした。
まず、最初に取り上げたのが「1.上層部役員の確保」だ。目的は、人望とウェブ解析への理解がある役員を「エグゼクティブスポンサー」としてウェブサイトの運営に巻き込み、企業戦略上での優先順位を高めるということにある。役員を巻き込むことは、「2.ビジネス目標と技術導入の連携」にもつながる。ウェブサイトによってどのようなビジネスゴールを実現したいのか、どのようなデータを収集して分析すれば具体的な行動につなげられるのかを正確に認識しなくてはならない。
同社の調査によれば、明確な測定戦略を持っている企業はわずか18%に過ぎないという。ダイクス氏は、具体的な行動を起こすために必要なKPI(主要業績評価指標)を設定し、戦略が古びないように継続的な改善を続けていくことの重要性を強調する。
「3.人材と教育への投資」や「4.コーポレートスタンダードの確立と維持」も重要なポイントだ。人材についていえば、「ウェブ解析担当者」と「技術リーダー」の2プレーヤーがコアチームとして中心的な役割を担うことになる。「ウェブ解析担当者」はマーケティング経験があり、コミュニケーションスキルの高い人材である。一方の「技術リーダー」は社内のウェブシステムを理解していることに加えてビジネス的な観点も備えていることが望ましい。
「どちらについても専任として任命し、社内にノウハウが蓄積できる体制を構築することが重要です。ウェブ解析担当者を専任にしたことで、3000%のROIを引き出した例もあります。そして上層部役員により、情報に基づく意思決定を行う体質を組織に浸透させる必要があります」(ダイクス氏)
人材への投資を行うことによって、初めて各種ツールの投資効果を最大化できる。道具がどれほど素晴らしくても、使いこなせなくては意味が無いからである。オムニチュアでは、認定制度やカスタムトレーニング、Omniture Universityトレーニングコースなどの社内コアチームのスキルを向上できるさまざまな教育オプションを提供しているという。
「組織は複雑化するほど管理が必要になります。組織化・管理化への取り組みレベルが高く、企業価値の高い企業には『コーポレートスタンダード』が確立されています」とダイクス氏は解説する。コーポレートスタンダードにはKPIの共有やデータ整合性などが含まれる。
ウェブ解析は導入すれば終わりではありません。解析で得た数値をどのようにしてビジネスに活かしていくか、組織としての運用ノウハウが試されます。KPIの設定といった重要課題から、ウェブ2.0、RIAへの対応など一歩進んだ可能性まで、オムニチュア株式会社のベストプラクティスコンサルタントである大山忍氏がウェブ解析の全貌を解き明かします。